健大高崎―明徳義塾 試合前、外野での練習に向かう佐藤龍=上田博志撮影

(18日、第97回選抜高校野球大会1回戦 群馬・健大高崎3―1高知・明徳義塾=延長十回タイブレーク)

 高校野球の昨春の選抜大会で、健大高崎(群馬)は初優勝を果たした。優勝の瞬間、2年生でエースナンバー「1」を背負った佐藤龍月(りゅうが)選手はマウンドにいた。だが、昨夏に左ひじのけがが判明し、いまは回復途上だ。18日に開幕する今大会は背番号「18」をつけて、連覇を狙うチームを支える。

 14日にあった甲子園練習。佐藤選手は打撃練習で鋭い当たりを放った。「甲子園はやっぱり夢の舞台。昨年はヒットを打てなかったので、(今年は)絶対にヒットを打ってやろうと思った」

 昨春の選抜大会では、インステップする独特のフォームから140キロを超える速球や精度の高い変化球を繰り出し、優勝の原動力となった。だが、昨年7月の群馬大会中に左ひじに痛みが出て、腕を上げるのもつらくなった。

 群馬大会後の検査で、左ひじの内側側副靱帯(じんたい)損傷と疲労骨折が判明。甲子園大会のメンバーから外れ、昨年8月30日に内側側副靱帯再建術(トミー・ジョン手術)を受けた。4時間ほどの手術で、左手首の腱(けん)をひじに移植し、骨を削った。

 「つらかったけど、手術は将来を見据えて自分で決めたこと」。仲間は帽子のつばの裏に「龍月の分まで」と書いて甲子園での試合に臨んだ。佐藤選手にとっても、心の支えになった。

 手術後はリハビリの日々。最初は日常生活も苦労した。練習の補助や基礎トレーニングと少しずつ野球に復帰し、今は打撃練習やキャッチボールができるようになった。担当医師からは「普通よりも早く回復している」と言われる。「できることが増えていくのがうれしくて、改めて野球の楽しさを感じている」

 2日、日大三(東京)との練習試合で「9番・指名打者」として実戦復帰し、3打数2安打と活躍した。中学時代は打撃も得意だったといい、持ち味は「どんな球でもフルスイング」。50メートル走のタイムは5.9秒で、同学年の中でも随一だという。選抜大会では、代打か代走で試合に出たいと思っている。「今は何かに特化してメンバーとして認められるようになりたい。目標があった方が頑張れる」

 昨年佐藤選手との「二枚看板」と言われた右腕・石垣元気投手(3年)が秋季関東地区高校野球大会で球速表示158キロを記録して注目されるなど新エースとして成長。昨夏初めて甲子園を経験した左腕・下重賢慎投手(3年)も安定感のある投球を見せ、急成長している。春はこの2投手が軸となる。

 佐藤選手はひじの状態を見ながら4月にはブルペンに入り、捕手を立たせた状態での投球練習に取り組む予定。夏までに投手復帰もめざしている。「やっぱり甲子園でもう1回投げたい。夏の群馬大会でしっかり投げて、チームを甲子園に連れていきたい」と誓う。

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