農林水産省は31日、備蓄米の運用を見直すことを決めた。従来の凶作時に加えて、円滑な流通に支障が生じた場合にも、市場に放出できるようにする。新米の流通後も米価上昇が止まらない想定外の事態を前に、方針を転換した。

政府の倉庫には100万トン近くの備蓄米が眠る=農林水産省提供

 昨夏の南海トラフ地震の臨時情報による買いだめで、スーパーの店頭からコメが消える事態が発生した。備蓄米の放出を求める声が相次いだが、農水省は拒んできた。

  • 備蓄米の「大転換」に農家の胸中は 価格高騰、「売り渋り」の実態

 背景には、コメの生産や流通を国が管理する食糧管理制度(1995年廃止)のもと、余った米を高値で買い支えさせられ、巨額の赤字を垂れ流した過去への反省がある。

 コメ農家の政治力は強く、消費者よりも生産者を重視した農政が長く展開されてきた。そのなかで、凶作以外の理由で政府が市場に介入すれば、何が起こるのか――。「余ったときに『政府が買え』と言われ、抗し切れなくなる」(農水省幹部)と懸念していた。

 それでも今回方針を転換した…

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