Smiley face
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92歳で亡くなった祖母がアトリエとして使っていた部屋=猪股修平さん提供

 都内で雑誌記者として働く猪股修平さん(27)。

 今年2月、宮城県美里町に住んでいた祖母が、92歳で亡くなった。

 老衰との診断だったが、祖父がこの世を去って3カ月後の旅立ち。

 「おじいちゃんが天国に呼び寄せたのかな」

 家族の間では、そんな話をしていた。

 亡くなる半年前には、スカーフを巻いて、杖もつかずに1人で電車に乗り、仙台の百貨店へ行くほど元気だった。

 小学校の教師を定年退職した後、趣味の油絵に没頭し、美術展で佳作に選ばれるほどの腕前に。

 祖母について修平さんが知っているのは、これくらい。

 昨年、祖父に生い立ちや経歴を「インタビュー」したが、祖母は後回しにしていた。

 「元気だからいつでも聞ける」と思っていたことを悔やんだ。

洋間の扉が開いていて

 5月中旬、祖父母が住んでいた美里の家を訪ねた。

 前日に車で福島県を訪れていたので、「近くに来たから墓参りに行こう」と思い立ったのだ。

 今は、叔父が猫と一緒に住んでいる家。

 叔父が庭をいじっている間、居間でパソコンを開き、仕事のメールを確認していた。

 ふと手を止めて、祖母が使っていた洋間の方を見ると、扉が開いている。

 アトリエだったことは知っていたが、一度も入ったことがない。

 「中はどんな風になってるんだろう?」と興味が湧き、部屋に入ってみた。

 まず目に入ったのが、大きな…

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