12日目、結びの一番を裁く第38代木村庄之助(右)=2024年9月19日午後5時52分、両国国技館、吉本美奈子撮影

 熱戦が続く、大相撲9月場所。朝から午後6時まで500番ほどの取組がある中、結びの一番だけを裁いているのが、島根県出雲市出身で行司最高格の第38代木村庄之助(64)=本名・今岡英樹、高田川部屋=だ。38代庄之助は、65歳の誕生日となる9月場所千秋楽の22日に定年を迎える。

 名大関だった前田山のファンだった。その前田山が高田川親方となって部屋を興した際、行司を志願して手紙を送った。「いまだに書いたことのないような長い手紙でした」。

 採用内定を伝えるおかみさんからの返事は「うれしいなんてもんじゃなかった」と振り返る。その手紙を握りしめて上京し、50年がたつ。

 木村秀樹~木村英樹~木村和一郎~式守勘太夫をへて、2019年1月場所で立行司の41代式守伊之助に。今年1月場所で最高格の38代庄之助を襲名した。

 立行司である伊之助と庄之助は、「親方」と呼ばれる。日本相撲協会が公益法人化するまでは、理事を選ぶ評議員も兼務していた。

 角界は力士だけでなく、呼び出しも行司も「番付社会」だ。行司は番付によって装束にも決まりがあり、幕下格までは裸足。30歳前後で十両格に昇進してようやく足袋が許される。三役格になると草履をはき、印籠(いんろう)を下げる。

 伊之助と庄之助は腰に短刀を差す。軍配を差し違えたら切腹する覚悟を示している。いまも、立行司が差し違えたら相撲協会理事長に進退を伺うしきたりだ。

 伊之助に昇進した5年ほど前…

共有
Exit mobile version