建築界に感銘を与えた建築作品の設計者に贈られる「第34回村野藤吾賞」に、山形市南部児童遊戯施設「シェルターインクルーシブプレイス コパル」(山形市片谷地)を設計した建築事務所「o+h」(東京)の大西麻貴さんと百田有希さんが選ばれた。「コパル」はインクルーシブ(包摂)をテーマに、施設内はひとつながりのスロープで回遊できる空間となっていて、障害者を含むすべての子どもたちに開かれた場所づくりが高く評価された。
村野藤吾賞は、日生劇場や新高輪プリンスホテルなどを手がけ戦後日本の建築界をリードした建築家・村野藤吾(1891~1984)の顕彰を目的に87年に創設された。山形県内の建物が同賞を受賞したのは初めてという。
「コパル」は、山形市の子育て環境整備の一環として、2022年4月に開館した。設計のコンセプトは「すべてが公園のような建築」。延べ床面積は3175平方メートルで、遠景の蔵王連峰の山並みや、たなびく雲に呼応したような曲線の屋根が印象的な建物だ。
館内は、大きな斜面を備えた大型遊戯場では、すべって遊んだりロープで登ったりと、まるで野山を駆けまわるように体を動かすことができる。段差やスロープ、洞窟のようなトンネルもあり、子どもの挑戦心や探検心が自然と生まれる空間になっている。施設内をつなぐスロープは、車イス利用者の通路となるほか、車イスを使わない子どもにとっても走りたくなる道になるよう工夫されている。
建物の特徴について、色部正俊館長は「建築の常識や慣習を超え、一人ひとりを笑顔にするにはどういう建物にすればいいかという考え方が原点にある」と言う。施設利用は誰でも無料だ。
施設の利用においても、遊具の使い方や遊び方に制約を設けていない。色部館長は「だからこそ、子どもたちは自分で遊び方を考え、作っていく。生きる力を育む場となっている」と言う。
今月18日で開館3年を迎えるが、これまで約50万人が利用。全国各地や海外からも視察が相次いでいる。
設計者の大西さんと百田さんは「コパルのインクルーシブな場のあり方が、建築界でも評価いただいたということで、大変うれしく感じている。これもコパルの、施工、運営、維持管理、設計のチームの力で頂いた賞だと感じている」と喜ぶ。
その上で、障がいの有無や国…