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 入れ墨の図柄が描かれた書籍の閲覧を受刑者の男性に許可しなかったのは人権侵害にあたるとして、今後は閲覧の可否を慎重に検討するよう求める「勧告」を、札幌弁護士会が25日付で月形刑務所(北海道月形町)に出した。男性から人権救済の申し立てがあり、調査していた。

 調査報告書によると、月形刑務所で受刑していた男性は2021年7月30日、入れ墨の図柄が描かれた書籍の閲覧を禁止された。出所後にタトゥーアーティストなどの職に就きたいと考え、デザインを勉強していたという。

 刑務所は調査に対し、「反社会的集団の象徴である入れ墨の原画を閲覧させることで、反社会的価値観を助長しかねず、犯罪に対する意識をゆがませる恐れがある」と回答したという。

 弁護士会は、最高裁の判例に照らして、「入れ墨=反社会的集団に関連するもの」とするのは誤りで、刑務所の回答には飛躍や偏見があると指摘。今回の閲覧禁止は、憲法や刑事収容施設法が保障する「図書閲覧の自由」を侵害したものと結論づけた。

 「勧告」は5段階ある人権救済措置のなかで3番目に強力なものだが、強制力はない。

 月形刑務所の小松一俊所長は「違反や不当な点はなかったと考えている。引き続き被収容者の適正な処遇に努める」とコメントした。

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