福岡女子商業高校から星の杜高校に留学した川崎結衣さん(中央奥)。制服着用が義務化されておらず、生徒同士の対話型で進む授業が新鮮だったという=2024年11月28日、宇都宮市の星の杜高、重政紀元撮影

 通学する高校とは別の高校にホームステイをして通う「国内留学」を目的に、全国の12の私立高が「ハイスクールコンソーシアム」を立ち上げた。学びを広げられる試みとして注目されそうだ。

 初年の今年は、準備が整った星の杜(もり)(宇都宮市)、御殿場西(静岡県御殿場市)、福岡女子商業(福岡県那珂川市)の3校の18人が参加。11月に1週間、国内留学した。

 生徒が普段暮らす土地を離れ、異なる文化を持つ学校で学ぶことで、気付きを促し、成長につなげるのが狙いの一つだ。

 福岡女子商業に留学した伊藤愛心さん(15)=星の杜1年=は海外留学を希望しており、言葉や文化の違いを乗り越えようと、国内で違う環境を体験したいと思った。

 「1人で飛行機に乗るのは初めて。みんなが仲良くする中に入るのも怖かったが、やってみたらすぐ不安はなくなった。海外留学に向けていい機会になった」

 大森小稟さん(16)=同=は「栃木の良さを伝えようと思ったが、できなかった。もっと地元のことを知り、自ら発信する力をつけなければと感じた」と語った。

 もう一つの狙いは、生徒が体験したことを母校で生かすこと。東北から九州まで、コンソーシアムに参加する12校は、教師による一方通行の講義にとらわれない教育に取り組んでいるという。

 入学後すぐに国内留学を希望したという川崎結衣さん(16)=福岡女子商業1年=は、星の杜の特色であるグループ単位の授業や、服装や髪形が自由な校風に驚いた。

 「グループ授業は発言がしやすくてすごくいい。母校も校則は厳しいわけではないが、校則で縛らなくても、自立した学校生活が送れると感じた」

 2017年に公立から私立に転換した福岡女子商業は、生徒の挑戦を重視した改革に取り組んでいる。国内留学にも対象となる1、2年生の約1割、38人が応募した。徳永道昭事務長は「挑戦する生徒の気持ちに学校もこたえたい」と話す。

 留学の費用負担は、往復の交通費、朝食・夕食以外の食事代などだけ。生徒や教師の家でホームステイする。

 兼田健吾さん(16)=星の杜1年=は御殿場西の同級生の家に泊まった。「同じ部屋で泊まるのに最初は戸惑ったが、趣味が一緒ですぐになじめた。転校は何回かしているので新しいところに入るのは慣れていても、それとは違う経験ができた」と話す。

 コンソーシアムは2年前、星の杜の小野田一樹校長が提唱して始まった。学校の連携の少なさを改革したいという思いからだという。

 星の杜の学校経営を所管する青木直行さんは「法人が異なる私立高校が連携するケースはほとんどない。増加する高校と大学間の連携も多くは入学枠目当てで、教育の内容まで踏み込んでいるところは少ない」と話す。

 12校では来年度以降、留学期間を1~3カ月単位にすることも含め準備をしている。また、公立と違い、転勤機会のない教員を対象とした交換勤務制度も検討するという。

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ハイスクールコンソーシアムに参加する12高校

 専修大北上(岩手)、星の杜(栃木)、ドルトン東京学園(東京)、三浦学苑(神奈川)、御殿場西(静岡)、名古屋経済大市邨(愛知)、立命館宇治(京都)、常翔学園(大阪)、英数学館(広島)、土佐塾(高知)、福岡女子商業(福岡)、東明館(佐賀)

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