中国で一党支配体制を敷く共産党の機関紙・人民日報は「党ののどと舌」と位置づけられるメディアの代表格だ。公式発表をもとにした硬い記事が紙面を埋めるが、政府関係者への直接取材が困難な中、政府や党の動向を探ろうとする記者は日々フォローすることが欠かせない。歴史を振り返れば、人民日報の社説が、中国を大混乱に陥れた文化大革命ののろしとなったこともある。
その重要な情報源である人民日報で最近、記者が警戒を高める署名記事がある。
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「鍾一平(チョンイーピン)」
その署名がついた記事が、昨年5月から今年4月3日の間に少なくとも8回載った。4面に掲載されることが多く、いずれも台湾統一を悲願とする共産党と距離を置く台湾の頼清徳(ライチントー)総統を「トラブルメーカー」や「戦争メーカー」と決めつけ、「断固として懲戒せよ」などと批判する論調だ。
その重要性に気づいたのは、昨年12月だ。
「演習はないよ」 そのわけは…
頼氏は昨年11月末~12月…