再審請求中の死刑執行によって弁護権を侵害され、精神的苦痛を受けたとして、元死刑囚の弁護士3人が国に計1650万円の国家賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁(大森直哉裁判長)は14日、原告側の請求を棄却した。
地裁は「慎重な検討を要する」としつつ、「再審請求が不断に繰り返されることによって、執行が事実上永続的に不可能になる」などと判断した。
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3人は、強盗殺人などの罪で2004年に死刑が確定した元暴力団幹部、岡本(旧姓・河村)啓三元死刑囚の再審請求の弁護人を務めていた。岡本元死刑囚は「強盗目的ではなかった」と刑の是正を求め、4回目の再審請求中だった18年12月に死刑が執行された。
訴訟で原告側は、弁護人は「死刑囚の命を預かる立場」だとした上で、執行によって本人に対する事実関係の確認はできなくなり、「誤った判決を正すという使命の追求が困難になった」と主張。国には「立証妨害」について賠償責任があると訴えた。
一方で国側は、刑事訴訟法には「再審請求は刑の執行を停止する効力を有しない」という規定があると説明。「再審請求中に執行してはいけないという法的義務はなく、弁護権侵害に当たらない」と反論していた。
再審請求中の死刑については、冤罪(えんざい)の可能性を考慮し、執行を控える運用が戦後しばらく続いた。ただ多くの死刑囚が再審を請求するなかで「延命」批判も高まり、1999年に執行された。その後も執行しない時代が続いたが、2017年からは相次いで執行がなされるようになっていた。
死刑制度に詳しい笹倉香奈・甲南大教授によると、同じく死刑を執行している米国では、再審請求にあたる申し立てがあれば裁判所の最終判断が出るまでは執行されない運用が定着しているという。