クレーン車による解体作業が進む東京電力福島第一原発の処理水タンク=2025年2月21日、福島県双葉町

 東京電力福島第一原発の処理水放出が始まって24日で2年が経つ。これまでの放出量は約10万トン。行き場のない水をためて増え続けていたタンクも、事故後初めて解体が始まった。ただ、処理水の元になる汚染水の発生を止める廃炉は難航し、放出がいつまで続くのかは見通せない。

 今年度は7回、約7900トンずつを海水で希釈しながら放出する計画だ。現在は今年度3回目、累計14回目の作業が25日まで続いている。東電の秋本展秀・福島復興本社代表は6日の記者会見で、「ここまでは安全に行うことができた。だが、回数を重ねると、慣れや隙が生まれがちで、それは絶対にあってはならない」と語った。

 原発内で放射性物質にふれた汚染水からセシウムなどを「多核種除去設備」(ALPS)などで取り除いた水が処理水だ。トリチウムは除去できずに残ったまま海に流している。漁業者らは漁業への影響を懸念していた。

 この間、水産物への悪影響は確認されていない。水産庁は22年から、北海道から千葉県の太平洋沿岸で水揚げされた水産物のトリチウムの量を調べ、いずれも検出限界値を下回ったとしている。福島大学の高田兵衛教授らの研究グループは今年7月、第一原発の近海で採集したシロメバルやヒラメなどを調べ、体内にトリチウムの蓄積が見られなかったとする論文を発表した。

 ただ、中国などが放出を受けて行った禁輸措置で、北海道のホタテ漁などが被害を受けた。東電によると、処理水放出にともなう賠償金は7月末までに約810件で790億円。前月から約30件、約40億円増えた。対象は、国内の消費者の買い控えなどではなく、禁輸の打撃を受けた事業者が多いという。

 放出はトリチウムの濃度が低…

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