リスクの高い分娩(ぶんべん)や新生児への高度な医療に対応する「総合周産期母子医療センター」で、1回の分娩あたり平均約151万円の経費がかかっていることが、全国周産期医療(MFICU)連絡協議会の調査でわかった。一方で、医師不足などの理由で診療報酬上の管理料がとれない病院が2割近くあり、厳しい運営実態が明らかになった。
協議会は11月17日に都内で公開シンポジウムを開き、周産期医療の現状についてデータを使って説明した。
厚生労働省の指針では、総合周産期母子医療センターは各都道府県に1カ所以上設置することとし、現在は全国に112カ所ある。
医師や看護師の配置が手厚い「母体・胎児集中治療管理室(MFICU)」を備え、重い妊娠高血圧症候群や切迫早産、先天異常などに24時間対応している。各地にある地域周産期母子医療センターとも連携し、高度な医療を提供している。
MFICUでは、基本的には常に産科を担当する複数の医師が勤務する必要がある。3床あたり1人の助産師か看護師を配置し、麻酔科医や新生児医療を担う小児科医も必要になる。このため、分娩あたりの経費は多くかかる。
実態を調べるため、協議会が2023年夏にアンケートをしたところ、分娩1件あたりの平均値が約151万円となった。施設では24時間同じ体制を維持しなければならず、東京・大阪・名古屋以外の出生数が少ない地域のほうが経費が高い傾向にあった。
経費の高さに加え、問題となっているのが24年度の診療報酬改定の影響だ。
MFICUの管理料の要件が見直され、夜間や土日を含め、宿日直で常時2人の産婦人科医を置くか、宿日直ではない産科医1人と呼び出し対応できる医師1人を置かなければならなくなった。
改定前に宿日直の医師1人を置いていた病院は、配置する医師を増やさないと管理料が取れなくなった。
協議会のアンケートでは、昨年度までに管理料が取れていなかった8病院に加えて、新たに10病院でも管理料が取れなくなった。協議会によると、取れなくなった理由のほとんどは、医師不足だったという。大都市ではおおむね取れており、都市部と地方の差が広がりつつある。
各センターのMFICUには…