高校野球の主役はプレーする選手だけではない。チームの勝利のため、グラウンド外でさまざまな役割を担う部員たちがいる。
波多江真佳(まか)さん(3年)は、春夏あわせて甲子園出場8回の強豪、福岡大大濠(福岡市)で初となる女性部員、そして副主将だ。
小学4年で野球を始め、中学では野球部でプレー。高校でも野球に関わりたかったが、同校には女子部員がいたことはなく、マネジャーも男子が務めていた。
それでも諦めず、八木啓伸監督(47)に思いを伝え続けた。すると数日後、「見るだけなら」と練習に顔を出すことを認められた。間近でプレーを見られてうれしかった。ただ、「入部して力にならないと意味がない」という気持ちが日増しに強くなっていった。その熱意が伝わったのか、夏の福岡大会が終わった頃、監督に呼ばれた。「部員」として、選手のサポートをできることになった。
道具の管理やスコア記入、ノックの補助……。会話や声かけが好きで、練習中は声を張り上げて選手を鼓舞する。悩み相談に乗ったり、勉強のアドバイスをしたりと、グラウンド外でも選手に頼られるようになった。
そして2年生となった昨夏、監督に副主将に指名された。試合を冷静に見つめ選手に的確に助言できる分析力、監督らにも的確にチームの状況を伝えられる対話力。ひたむきな人間性が決め手になったという。
重責を任されて迎える最後の夏。いまはチーム全体を見渡し、部員が気軽に相談できる役割を全うすることだけを考えている。「みんなと悔いのない夏にする」
データを分析、勝利に貢献
佐土原(宮崎市)の竹内強太さん(3年)は、「データ班」としてチームに欠かせない存在だ。
小学1年から始めた野球を高校でも続けたかったが、通学時間は片道約2時間。始発でも朝練に間に合わない。放課後の練習に参加すると帰宅は午後10時半を過ぎる。
諦めかけたが、冨永圭太部長(34)から声をかけられた。「データ班をつくりたい」。当時2年だった姉の理乃さん(19)と「創設メンバー」になった。
練習試合では相手投手の動画を撮影し、フォームや球種を分析し、動画とデータを選手に提供する。創設1年目、新チームが発足して迎えた初の公式戦では「スライダーが多め」と事前に分析した投手を打線が打ち崩し、逆転勝ち。選手から「データ班のおかげだ」と声をかけられた。「データがちゃんと役に立ってうれしかった」
選手には週に1回、LINEで体重を報告してもらう。速い球を投げたり、球を打ちやすくなったりする選手ごとの理想の体重との差をエクセルに記載して示すためだ。
理乃さんは卒業したが、今はデータ班は1、2年を含め4人。冨永部長は「データ班は大事な戦力」と言い切る。日高崚汰主将(3年)も「感謝している。データをフル活用して、強太を甲子園に連れていきたい」と話す。
竹内さんは毎日練習に出るが、いられるのは1、2時間ほど。ただ、帰宅後にパソコンに向かって、スコアを元に打率を計算したり、動画を切り抜いてまとめたりする。集大成となる夏に向けて分析にぬかりはない。「プレーはかなわなかったが、関われるのがうれしい」。データでチームの勝利に貢献したい。