移住して農家になり、初めての収穫だった。周りのベテラン農家たちには、まるでかなわなかった。でも、自分で育て上げた桃は、ジューシーで甘かった。
2日朝5時半。早朝だというのに、もう暑い。扇風機つきの空調ベストを着た小池知広(ともひろ)さん(39)は、汗をぬぐいながら「日川白鳳(ひかわはくほう)」という早生(わせ)品種の桃を収穫した。
妻の有規(ゆき)さん(49)とともに、福島県内有数の果樹地帯である福島市飯坂地区に移り住んだのは昨年6月だ。農家になる前は、東京のコールセンターで10年ほど働いた。
「桃のいい香りがしますね」と記者が話しかけると、知広さんは苦笑いした。「お客さんのもとにすぐには届かないから『香りがする前に収穫を』と教えられていたのに、見極めが難しくて」
計20キロほどの桃を農協の出荷所に運んだ。勝手がわからず、周りをまねて伝票を添えた。どんな等級に評価され、いつ知らされるのか。不安でいっぱいになった。
都内で催された就農フェアに…