「劇団四季は人生そのもの。100年目の四季がどうあるべきかを今、一生懸命考えている」=山本佳代子撮影

 「アナと雪の女王」「ライオンキング」など、大ヒットミュージカルのロングランを続ける劇団四季。社長執行役員の吉田智誉樹(ちよき)さん(60)は、若き日、劇団創設者の故浅利慶太さんから受けた「叱責(しっせき)」の見事さに感服した強烈な体験があります。その言葉とは――。

 劇団四季の広報部員だった27歳の夜、東京・青山劇場。ミュージカル「李香蘭」上演中の主催者控室で、同僚とおにぎりを食べながら雑談していると、ドアがバタン、と開いた。浅利慶太さんだった。

 「役者が本番をつとめている劇場で、お前らはなんだ!」

 更なる雷が落ちたのは数日後、経営会議の席だ。曰(いわ)く、仕事への姿勢が甘い。劇団黎明(れいめい)期の営業マンは眼光鋭く一分の隙もなく、「すれ違えば血の匂いがしたもんだ」――。

 「私は叱責に身を縮めつつ、なんと詩的なことを言う人か、と感嘆していた。その短いフレーズで、かつての緊迫した空気感と、私に何が足りていないかが、ずばり伝わる。つくづく『言葉』の人なのだ、と思った」

 四季との出会いは高校時代。作品は無論だが、見事に統制された「劇団」の凄(すご)みにひかれ、公演のたび劇場に通った。大学まで学生演劇に身を置き、わかったのは役者としても演出家としても、自分に才はない、ということ。それでも四季の採用試験を受けたのは、率いる浅利慶太という男に会ってみたい、との一念もあった。

 だが自身と同じ慶応大の学生…

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