サヨナラ3点本塁打を放った帝京の富浜琉心③は、本塁で仲間に迎えられる=2024年4月28日午後0時20分、スリーボンド八王子、大宮慎次朗撮影
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 春季東京都高校野球大会(都高校野球連盟主催)は28日、スリーボンドスタジアム八王子で決勝があり、帝京が東海大菅生を8―5で破り、2年連続15度目の優勝を決めた。帝京は1点を追う九回に同点に追いつくと、3点本塁打でサヨナラ勝ちした。両校は5月18日から群馬県である関東大会に出場する。

 一時は4点差をつけられた帝京に劇的な逆転勝利をもたらしたのは、5番の富浜琉心(りゅうしん)(3年)だ。同点に追いついた九回裏、無死一、二塁。変化球に狙いを定めて、2球目。狙い通り甘く入った内角低めのスライダーを芯でとらえ、思いきり振り抜いた。

 「頼む」。祈る思いで空を見上げると、打球は勢いよく左方向に上がり、フェンスを越えた。大歓声が沸く中、ダイヤモンドを一周しながら拳を突き上げ、本塁で待つ仲間の元に飛び込んだ。

 この打席まで4打数無安打2三振。「ここで決めないと夏のレギュラーはない」。そう言い聞かせ、思いを託した一発だった。

 チームは昨秋の大会、一次予選で強豪・二松学舎にコールド負け、本大会に進めなかった。ベンチで試合を見守り、仲間を応援することしかできなかった。

 悔しさをバネに、重量挙げなど下半身のトレーニングを重ね、体を鍛えた。今春、初めて公式戦のスタメンに選ばれ、初本塁打を記録。この日のサヨナラ本塁打は公式戦通算3本目だ。「打った瞬間は、自分でも何がなんだか分からなくて。ただうれしい気持ちと、ほっとしたのが一番。やるべきことはやれたと思った」と試合後、顔をほころばせた。

 ただ、昨年は今年同様、春季大会を制しながら、夏の東東京大会5回戦で敗れ、甲子園の切符を逃した。この日の結果に甘んじることなく、最後はこう意気込んだ。「春、優勝しても成長しなければ夏は勝てない。ここはゴールではなく、通過点です」(佐野楓)

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