北海道大学
2023年7月24日 6:00(日本時間)
北海道大学と製薬会社塩野義製薬は、希少鳥類を高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)から守る治療法の開発に協力する。
この提携では、塩野義製薬が製造する人間のインフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」を利用してこの問題にアプローチする。
今回の鳥インフルエンザの発生では、動物園で飼育されている鳥だけでなく、絶滅の危機に瀕している野生の鳥の間でも感染が広がった。
同大学と大阪の製薬会社は、適切な投与量を検討して治療法の確立を目指し、動物園や鳥類保護施設などでの普及を目指す。
塩野義製薬が2018年に販売を開始したゾフルーザは、人体内のインフルエンザウイルスの増殖を抑え、1回の投与で高い効果を示した。
今回の流行では、鳥インフルエンザが昨秋から今春にかけて日本で蔓延し、養鶏場で感染が見つかった鶏を含む1771万羽の鳥が殺処分された。
法律で保護の対象となっている野生の希少鳥類の間でも感染が広がった。

環境省などによると、鹿児島県ではナベヅルやオジロヅル約1500羽が死んでいるか衰弱しているのが見つかり、北海道ではオジロワシの死骸からHPAIウイルスが見つかった。 これらの鳥はすべて中央政府によって絶滅危惧種に指定されています。
動物園などの鳥類飼育施設でも、ウイルスを持った野鳥の侵入で感染が広がった。 国内の5つの施設ではモモイロペリカンを含む約15羽の鳥が感染しているのが見つかり、そのうちの数羽は回復不能と判断され安楽死させられた。 感染していない鳥でも、防疫措置として約40羽が殺された。
動物園の鳥類は原則として家畜伝染病予防法の対象外で、感染した家畜を飼い主に殺処分する義務がある。 しかし、感染拡大を避けるため、動物園運営者の判断で感染鳥を殺処分するケースも少なくない。
そうした犠牲を減らすため、北海道大学の迫田義弘教授(ウイルス学)らは、ヒト向けの抗ウイルス薬を使った治療法の開発を進める。
まずは法律で保護されている希少鳥類が治療の対象となり、動物園でも活用される可能性がある。
同大学は、ニワトリなど感染した鳥を使った過去の研究を通じて、複数の薬の効果を比較する実験を行った結果、塩野義製薬のゾフルーザが最も効果的であることが判明した。
研究者らは今後数カ月以内に、薬剤を投与された鳥の血中薬剤濃度(血流中に存在する薬剤化合物の量)を測定し、鳥の種類ごとに適切な用量と投与間隔を決定する予定だ。
無償提供で大学に協力する塩野義製薬の宍戸隆雄主任研究員は「開発の経験を生かして研究に貢献したい」と述べた。
最近の鳥インフルエンザの発生では、特に鶏卵の供給不足により、人々の日常生活にも影響が生じました。 しかし、ウイルスを迅速に封じ込めるために、鶏などの家禽の治療は認められていない。
このため、北海道大学は鳥類の治療法を確立しても、家禽には使用しない方針だ。
迫田教授は「命の尊さを学ぶべき動物園である動物園で動物が殺処分されるのを見るのは心が痛む。 私たちはできる限りの命を救いたいと思っています。」