2021年5月、国立がん研究センター中央病院(東京都中央区)
2023年9月19日 13時51分(日本時間)
すべてのがんのケースが細胞分裂時に発生する遺伝子変異から始まることは単純な事実ですが、がんの種類とその治療に適した薬が特定の変異の種類によって異なるということは複雑な現実です。 研究者チームは、小児がん患者のゲノム解析を通じてこの問題に対処しようと取り組んでいます。
早ければ11月にも、東京大学医学部附属病院や国立がん研究センターなどの研究者らが、小児がんの診断と治療に役立てるため、小児がん患者の全ゲノム解析の研究に着手する。 全ゲノム解析の有効性を確認して実用化し、将来的にはほとんどの患者をこの解析で診断できる体制を確立するのが目標だ。
がんは、細胞分裂の際の遺伝子のコピーミスにより体内の細胞に異常が生じ、制御不能に増殖することで始まります。 ゲノム解析は特定の変異を特定することにより、各患者にとって最適な治療法の選択につながります。
小児がんは、毎年 2,000 ~ 2,500 人が新たに診断されており、15 歳未満の子供に発生するがんの総称です。罹患人口は少なく、多様であるため、正確な診断が困難です。
全ゲノム解析に関する政府の2019年行動計画の一環として、研究チームは日本医療研究開発機構から研究資金を受ける予定だ。
2019年から保険適用になった遺伝子パネル検査は、がんに関連する遺伝子変異の一部を調べるものだが、技術の進歩により全ゲノムの解析が可能になった。 このパネル検査は主に成人を対象に開発されたもので、小児がんに特有の一部の遺伝子変異は全ゲノム解析でしか検出できないと考えられている。
研究には東京大学や京都大学などの大学病院や小児がんの専門病院など約20施設が参加する。 他の目標の中でも、彼らは診断と治療が可能なゲノム異常をどの程度検出できるかを判断したいと考えている。
各医療機関で患者から採取されたがん細胞を含む組織などの検体は、国立成育医療研究センターに集められ、民間検査機関に送られて分析される。
国立がん研究センターがデータを解析し、東京大学医学部附属病院を中心とする小児がんやゲノミクスの専門家5人程度が、患者の症状などの臨床情報をもとに症例ごとに治療法を検討する。 その後、患者の医師は、考えられる治療法やその他の情報を患者の家族に説明します。
研究結果は匿名化されて、製薬会社や研究機関に提供され、小児用の新薬の開発などに活用される。 2024年度以降も対象患者を拡大する考えだ。
チームリーダーの東京大学の加藤元裕教授は「全ゲノム解読を標準検査にして、小児がん患者が保険適用で受けられるようにし、最良の治療につなげたい」と語った。