南北朝鮮の軍事境界線に隣接し、北朝鮮から飛んできた「ゴミ風船」が落下した韓国北西部の農村地帯に取材に入った。軍事的な緊張が高まるなか、長年、北朝鮮との「最前線」で暮らす住民たちは不安を抱きながらも日常の暮らしを続けている。
6月12日、ソウルから車で1時間ほどの京畿道(キョンギド)坡州(パジュ)市を訪れた。臨津江(イムジンガン)を挟んですぐ対岸に北朝鮮を望む。農家の崔徳沅(チェドクウォン)さん(71)は5月28日夜、スマートフォンに届いた行政からの緊急速報メールの音に驚いた。北朝鮮から風船が飛んできているとの内容だった。「戦争でも起きるのかと思った」
翌朝、作業場に出向くと、ビニールハウスの高さを越す大きな風船が二つ落ちていた。周りを軍関係者が取り囲んでいた。
響き渡る「金日成将軍の歌」
崔さんが小学生の頃から北朝…