壁一面を埋め尽くす高級ブランドの「ルイ・ヴィトン」のバッグ、「ディオール」のドレスが、職人たちの技術力の高さを雄弁に語る。
南仏から運ばれ、館内に植えられた樹齢1300年のオリーブの太い幹は、長い年月にわたり連綿と続く自然と人の営みの関係を表す。大阪・関西万博のフランス館には、非日常の空間が広がっていた。
万博では、世界中の国々がパビリオンでの展示を通じて、自国の魅力や未来社会のあり方を発信している。
- 【そもそも解説】弁当持参可、現金使えない…万博来場時のポイントは
大阪では久しぶりの万博開催だが、開幕前から主催する日本国際博覧会協会が「予約制度は基本」(石毛博行事務総長)などと発信してきたこともあってか、「予約必須」とのイメージが強く、地元でも足が遠のく要因の一つにもなっている。
ところが、ほとんどの海外パビリオンは並べば自由に入場できる。「予約なし」で、どれだけ万博を楽しめるのか。実際に記者が会場を歩いてみた。
小雨降る4月末の平日。午後5時に大阪市内での仕事を切り上げ、大阪メトロ中央線で会場の夢洲駅(大阪市此花区)を目指した。
午後5時40分に駅に到着。チケット購入もパビリオンの予約もしていない「手ぶら」の人は東・西ゲート脇にあるチケット引き換え所で入場券を買う必要がある。
おすすめは午後5時から使える「夜間券」(大人税込み3700円)。「平日券」(同6千円)や「一日券」(同7500円)と比べて割安で、手を伸ばしやすい。
今月7日からは「トワイライトキャンペーン」として、当面の間、入場可能時間が1時間早まり午後4時から使えるようになった。ただ、発売するかどうかは来場予定日の前日夜に協会のホームページ「今週の万博」で発表されるため確認が必須だ。
いよいよ万博会場へ
午後6時ごろには雨も上がり、西の空が明るくなってきた。東ゲートに入場待ちの列はなく、チケット引き換え所から場内へは10分もかからなかった。
入場後はフランス館を皮切りに、万博のシンボル大屋根リングに沿って反時計回りに海外館を巡る。ルクセンブルク、ドイツ、韓国とまわったが、どれも並び始めてから見終わるまで長くても約1時間だった。
会場内では、外国人観光客とスタッフのあいだで当たり前のように英語で会話が始まる。各館ではスタッフが「ボンジュール」「モイエン」「グーテンターク」「アニョハセヨ」(「こんにちは」)とあいさつしてくれた。たった数十メートル移動するだけで世界を旅した気分だった。
「万博グルメ」も堪能
会場をまわり始めるとおなかもすく。「高い」と言われてきた「万博グルメ」だが、途中のルクセンブルク館ではご当地ビール「Bofferding」(税込み1300円)を楽しんだ。
また韓国館では甘辛いソースで鶏肉をあえた「ヤンニョムチキン」や「チーズボール」に、醸造酒のマッコリを合わせ税込み計4700円。テーマパークだと思えば、納得の値段だった。
食べ終わるころには午後9時を過ぎていた。ほとんどのパビリオンは閉館しており、色とりどりにライトアップされた建物や夜闇に輝くリングを見ながら帰路につく。
訪れることができたのは海外館四つだけだった。会場内には158の国・地域がパビリオンやブースを出展していることを考えると、ごく一部しか回れていない。事前予習していた夜の水上ショー「アオと夜の虹のパレード」やEXPOホールの壁面でのプロジェクションマッピングも見られなかった。
他の来場者も「時間が足りない」と感じたはず。午後9時半ごろに東ゲート脇に着くと、4・5月の来場者に配られる通期券の割引パスコードの配布場所に長蛇の列が出来ていた。このコードを使えば定価よりも6千円安い2万4千円で通期パスを購入できる。帰りの電車内では、女性2人組が「通期パス買わへんって言うてたけど、やっぱ買うわ」と話していた。
滞在時間は短かったが、もっと海外の人と話してみたいと感じた。「家の本棚に英語の参考書ってあったっけ」。万博を通じ、いつもとは少し違った「世界」が見えた。
日没後に楽しめるイベント
《アオと夜の虹のパレード》
「ウォーターカスケード」と呼ばれる水のスクリーンをつくりだす装置を使い、「アオ」と動物たちの心の交流を描く水上ショー(ウォータープラザ)。
《プロジェクションマッピング》
「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、2招待作品を含む、世界中のクリエーターから募った作品を月替わりで上映するイベント(EXPOホール「シャインハット」壁面)。
《One World, One Planet》
会場全体の音響や照明装置を使ったプロジェクションマッピングやドローンショーが連動した大規模イベント(大屋根リング南側上空など)。
※日替わりイベントは万博協会HPを確認
※季節や天候によりイベントの有無や開始時間の変更もある