国が浸水想定を見直した南海トラフ巨大地震をめぐり、全国23の都府県にある1万近くの医療機関・福祉施設が津波で浸水するおそれがあると分かった。病気やけがをしている人や高齢者など、配慮が必要な人たちの避難は命に直結する課題だ。現場はどう向き合っているのか。

南海トラフ地震の新しい被害想定で、津波の浸水リスクがあるとされた南港病院=2025年7月17日午前10時38分、大阪市住之江区、赤田康和撮影

 大阪市の中心部から地下鉄で20分ほどの場所にある南港病院(住之江区)。国による南海トラフ地震の新しい被害想定で、津波の浸水リスクがあるとされた医療機関の一つだ。

 伊藤正・法人本部長は「水とともに生きてきた地域ゆえに津波による浸水リスクは想定内だ。対策にさらに力を入れていきたい」と冷静に話す。

 5階建ての病院は、海までの距離が5キロほどの場所にあり、大阪市のハザードマップで、南海トラフ地震発生時に「50センチ~3メートル」の浸水エリアにある。

南海トラフ地震で浸水が想定される医療機関数

 伊藤さんによると、津波の発生時は、2階にいる36人の入院患者と、1階にいる外来患者を3階以上に「垂直避難」させる計画という。

■逃げるのは「遠く」より「高…

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