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「横向き」に落とした方が割れにくい。朝食の料理にも欠かせない鶏卵=2025年5月13日午後0時53分、水戸部六美撮影

 卵は「横向き」で落とした方が、実は割れにくい――。米マサチューセッツ工科大(MIT)などの研究チームが通説を覆す発見をした。卵料理をつくるときにも影響を与えそうな成果は、英科学誌「コミュニケーションズ・フィジックス」(https://doi.org/10.1038/S42005-025-02087-0)に載った。

 私たちの生活に身近な鶏卵。朝食やお菓子の材料だけでなく、小中学校の理科や物理の実験にも広く使われる。

 代表的なのが「卵落とし」だ。決められた材料を使い、卵が割れない保護装置を設計。高いところから落として、割れないかどうかなどを競う。物理学の知識だけでなく、アイデアやモノづくりのセンスも問われる総合頭脳競技だ。

 論文によると、この競技では、「卵は縦方向に落とした方が割れにくい」というのが「通説」になっていた。卵を縦にした際の上側や下側のカーブが、橋や門にある「アーチ構造」の役割を果たし、力を加えたときに変形しにくいと考えられていたようだ。

180個を落とし、60個を押しつぶす

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卵の落下試験前に、卵の計測をする研究チームのメンバー=MITのTal Cohen氏ら提供

 しかし、これに疑問を抱いたチームは、卵を縦と横で落とした場合の割れ方を詳しく調べる実験を始めた。具体的には8ミリメートル、9ミリメートル、10ミリメートルの三つの高さから各60個、計180個の卵を落とし、縦方向と横方向で割れ方に違いがあるかを比べた。

 結果、卵が割れる率は、横方向の方が縦方向より低かった。例えば、8ミリメートルの高さから縦で落とすと、過半数の卵が割れたが、横で落とすと、割れたのは1割未満だった。

 チームは、計60個の卵を、縦方向と横方向に押しつぶす実験もした。割るのに必要な力に違いはなかったが、横方向の卵は割れる前により圧縮できることがわかった。

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実験で縦向きに押したときに割れた卵=MITのTal Cohen氏ら提供
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実験で横向きに押したときに割れた卵=MITのTal Cohen氏ら提供

 つまり、「卵は横方向でより柔軟で、割れる前に多くのエネルギーを吸収できる」ため、落としたときに割れにくいのだという。「転ぶときに、ひざを伸ばしたままより、曲げた方が衝撃が和らぎ、けがをしないのと同じ」と筆者らは論文で説明する。

筆者は「縦で割るのはすすめない」

 常識を覆す研究のきっかけは…

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