厚生労働省から当初開示された12枚の文書。うち10枚は全面不開示の「のり弁」だった

 2018年6月、過労死認定をめぐる加藤勝信厚生労働相(当時)の国会答弁に疑問をもった記者は、真相につながる内容を含むとみられる文書について情報公開請求した。だが厚労省が当初開示したのは、全面黒塗りの「のり弁」と呼ばれる文書。訴訟を経て、ようやく知りたい内容を見ることができたのは昨夏のことだった。これは、情報を出そうとしない国との5年にわたる攻防の記録だ。

  • 過労死めぐる加藤元厚労相の国会答弁、開示文書と矛盾 18年審議で

 事の始まりは、17年12月26日の厚労省東京労働局の発表だった。業種を限定して労働時間の規制を緩める「裁量労働制」を違法適用した野村不動産に是正勧告した、という内容だ。

 労働局は企業の違法行為について、悪質なケースは書類送検して事案を公表することがあるが、その手前の是正勧告の段階では基本的に公表しない。だが野村不動産については事態の重さから「特別指導」と位置づけ、社名を含めて事案を公表する異例の措置をとった。この件がのちに波紋を広げることになる。

厚労相の「しっかり指導」は不誠実?

 政府は当時、「働き方改革法案」の成立をめざしていた。様々な法改正案を束ねたもので、その中に当初、裁量労働制の対象業務の拡大も含まれていた。野党は、裁量労働制が違法に適用されやすくなり、長時間労働が助長される懸念があるとして、法案に反対した。

 そんななか、加藤氏は18年2月の国会で、野村不動産への特別指導を引き合いに「しっかり監督指導を行っている」と答弁し、野党の懸念を否定した。

 ところが翌3月、朝日新聞の…

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