木頭ユズ=徳島県那賀町木頭、立川善久さん提供

 高齢化が進み、たわわに実った特産ユズの収穫に困っていた四国の山村に助っ人が現れた。300キロ離れた福井で、ユズを使った薬味づくりを手がける人たちだ。「地域の宝を守る」と駆けつけ、福井の味にも生かしている。

 総面積の95%超を山林が占める、徳島県那賀町。2021年夏、高知との県境に位置する木頭地区を訪れた関和宏さん(46)の目に入ったのは、実をつけたままのユズの木々だった。

 関さんは、福井県鯖江市尾花町で食品製造販売会社「越前隊」を営む。地元で家庭の味として受け継がれてきた薬味「山うに」を残すため、16年に同社を立ち上げた。原料にはユズが欠かせない。知人から「木頭ユズ」の存在と、それが放置されていると聞いての訪問だった。

 那賀町によると、徳島県のユズ生産量は高知県に次いで全国2位(21年)。なかでも木頭地区は山がちで雨が多いうえ、朝夕の寒暖差が大きく、香り高いユズが育つという。だが、14年度に400トン超だった木頭ユズ出荷量(青果)はその後に減少し、100~300トン台で推移。町は、高齢化率が52.1%(23年4月末)に達しており、担い手不足が背景にあるとみる。

 地元のユズ農家、立川善久さ…

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