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「めざせ!ムショラン三ツ星」の著者の黒柳桂子さん=2024年2月17日午後5時20分、名古屋市中区、三宅梨紗子撮影
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 一品一品に、調理した人の思いが込められているのは、どこの食卓でも同じだ。おいしさ、彩り、栄養バランス。さらに、社会復帰に向けた更生の願いを込めた食もある。「人生をやり直そうとする受刑者の姿が食を通して伝われば」。そんな思いから、刑務所の管理栄養士が受刑者との食事づくりを描いた奮闘記を出版した。

 2012年から岡崎医療刑務所(愛知県岡崎市)で管理栄養士を務める黒柳桂子さん(54)。昨年、「めざせ!ムショラン三ツ星」(朝日新聞出版)を出版した。飲食店を星の数で評価する「ミシュラン」と刑務所を掛け合わせた書名だが、刑務所での食事づくりの様子を、実際にあったエピソードを盛り込みながらユーモアたっぷりに描いた。「ムショメシ」を味わえる一冊だ。

 これまで、病院や特別養護老人ホームで管理栄養士として働いてきたという黒柳さん。現在は法務省の専門職である国家公務員の「法務技官」として献立を考え、受刑者に調理指導をしている。法務省によると、刑務所や少年院で働く法務技官の管理栄養士は全国で20人だ。

 刑務所では、「炊場係」と呼ばれる受刑者が刑務作業の一環で調理をする。岡崎医療刑務所は精神疾患や障害のある成人男性を収容し、調理経験がほとんどない受刑者も多いという。炊場係は十数人で、「下処理係」や「揚げ物係」などに役割分担して約110人の受刑者の3食分を作る。

 「ひたひた」や「軽く混ぜる」といった感覚的な表現がうまく伝わらないなど、食事づくりは思うようにはいかない。ゆでたじゃがいもを「冷ます」はずが、水にさらし、ビチャビチャのポテトサラダができあがったりすることもある。

 シューマイを作った際は、黒柳さんの「おいしくなるように祈って」の一言に、受刑者たちが「おいしくな~れ」と唱えながらできあがりを待ったこともあったという。

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