保育士向けの職場紹介サイトで保育園に関する口コミが他社サイトから無断転用されていた問題は、消費者の選択に影響しうる口コミが、最新技術の悪用で簡単に大量に生み出せてしまう実態を浮き彫りにした。専門家はネットのリテラシー(理解力)の重要さを指摘する。
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問題は11月25日、朝日新聞の報道で発覚した。保育士向けの職場紹介サイトを運営する東京都渋谷区の口コミサイト運営会社が、ネット上の情報を抽出する「スクレイピング」という技術を使い、他社サイトに掲載された保育園に関する口コミを収集。生成AI(人工知能)で文言を改変し、自分たちで正当に得たものと装って自社サイトに掲載していた。
同社の男性社長(26)は取材に、口コミの収集や改変を認め、無断転用は「2社のサイトから計約1千件」と説明。朝日新聞の指摘を受けてこれらの口コミを削除した、と話した。
元ITエンジニアでネット上の技術に詳しい河瀬季弁護士によると、スクレイピングは20年以上前からある手法で、政府も含め広く使われているが、場合によっては著作権法などとの兼ね合いで法的な議論がある。「ビッグデータをもとに考えたいという傾向が強まる中、スクレイピングについてもどこかで体系的に整理しないといけないだろう」と言う。
無断転用、横行か
情報リテラシーに詳しい国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(東京都港区)の客員研究員、小木曽健さんによると、他サイトからコンテンツを無断転用して問題化する事例は過去にもあったが、人の手による改ざんの不自然さから盗用が発覚してきた。
今回の問題については「生成AIを使うことで、自然であり、なおかつ法律に触れるか『グレー』なものを簡単に作り出せることが明らかになった」と指摘する。「ページさえ埋まれば質にはこだわらないというサイトが、人力では作成不能な大量のライティング業務を低単価で発注することがあり、すでに一部でAI活用が前提になっている」
小木曽さんは、同様の無断転用は表に出ていないだけで、すでに横行している可能性があると言う。「新しい技術が問題なのではなく、ユーザーの未熟さが引き起こした事案。すでに整備されている法律や倫理観を理解していれば起こせないはず」と話す。「自分たちの行いが自社の従業員や業界全体にどんな悪影響を与え得るのか、立ち止まって考えるべきだ」
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