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身を乗り出してえさを欲しがる「菊美翔平」=2024年5月24日、岩手県住田町、東野真和撮影
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 岩手県住田町の山奥に、驚異的な能力を持つ「翔平」という名の牛がいると聞き、会いに行ってみた。ストイックな生活を送りながら期待に応えていた。

 白衣に着替え、岩手県農業研究センター畜産研究所・種山畜産研究室の牛舎に大宮元・主任専門研究員(61)の案内で入ると、奥から「モー」と元気な声。11頭の黒毛の種牛のうち、ひときわ風格のある「菊美翔平」だ。体重約750キロ。他の種牛より大きめの顔で愛敬があるが、ちょっとイライラしているようだ。その理由は、後でわかった。

県内で歴代最高

 翔平は、5年がかりで選ばれた種牛の1頭だ。

 県内の畜産農家からいい肉牛を産んでいる約100頭を県が「基礎雌牛」に選定。交配させてできた子から順調に育った約10頭を買い取る。

 種山畜産研究室で育て、体重や、えさに対して効率良く成長しているかなどを調べ、3頭に絞る。

 その3頭の牛の精子を試験交…

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