コンクリート製で再建された名古屋城天守=2023年9月14日、名古屋市中区、寺沢知海撮影

 名古屋城天守の木造復元をテーマにした市民討論会でエレベーターの設置を求めた障害者の男性に「我慢せえ」などの差別発言があり、名古屋市の河村たかし市長らが発言を制止しなかった問題について、市の検証委員会が18日、最終報告書を公表した。組織としての人権感覚を問題視するとともに、河村市長らについても「人権感覚の希薄さが差別事案の背景・遠因にあった」と指摘した。

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 問題が起きたのは、昨年6月の市民討論会。車いすの男性がエレベーターの設置を訴えた。これに対し、他の参加者が「我慢せえ」「ずうずうしい」といった差別発言を浴びせた。会場には河村市長や複数の市幹部もいたが、誰も差別発言を制止せず、会場からは同調する拍手が起こった。河村市長は「熱いトークもあって良かった」と締めくくった。その対応に批判が相次いだことを受け、後日謝罪した。

 名古屋城復元は、河村市長の看板政策。ただ、バリアフリー対応をめぐっては、「史実に忠実な復元」を求める市長と職員の考えが割れている。

 最終報告は、討論会での差別発言に適切な対応ができなかったのは、河村市長の意向を気にしながら事業を進めなければいけない「職員の苦悩や葛藤が遠因となっていた」と指摘。会議での河村市長の発言を「パワハラ」と受け止めた職員もいたという。

 市民の間で意見が対立したり、討論会で差別発言が生じたりする背景には、市長と職員の認識の不一致があり、市民への情報提供が不十分だったなどと評した。

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