池の中で泳ぐ巨大クジラの行方を、魚たちが気が気でない様子で見つめているように映る。発行済みの日本国債の半分を保有する日本銀行は、さながら国債市場という池を席巻するクジラだ。そのクジラがどう動くか。発行元の財務省や市場関係者たちが注視するなかで、日銀が保有国債の新しい削減計画をまとめた。
日銀は17日、金融政策決定会合(年8回開催、メンバーは総裁以下9人)で、保有している約580兆円(6月10日現在)の新たな国債の削減計画を決めた。毎月の国債買い入れ額を少しずつ減らすことで、償還分とあわせ、全体の保有額を徐々に減らしていく手法である。
10年かけて保有国債を正常化?
2024年8月の減額スタートから26年3月までに7~8%減らす現行計画は変えず、今回、27年3月までにスタート時と比べて16~17%減らす計画を加えた。その時点の保有残高は480兆円程度になる見込みだ。結局、2年8カ月かけて、保有額を100兆円ほど削減することになる。
日銀は異次元緩和の11年間で国債保有残高を500兆円まで積み上げた。いまや「負の遺産」となったその残高を減らす作業は、現在のペースだと、やはり10年以上は要することになる。
国債だけでもこの調子なのに、約37兆円分を保有する上場投資信託(ETF)などの処理は手つかずだ。日銀の「出口戦略」は長期戦が必至で、植田和男総裁の任期内(28年4月まで)に終えるのはほぼ不可能だろう。
日銀が「クジラ」になったきっかけは13年4月、当時の黒田東彦総裁が始めた「異次元緩和」だった。黒田総裁は当時100兆円ほどあった日銀の国債保有残高を「2年間で2倍」にすると宣言した。
ところが、結果は2年で2倍…