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人工知能戦略本部会議で発言する石破茂首相(手前から3人目)=2025年9月12日午前10時30分、首相官邸、岩下毅撮影

 政府は12日、人工知能(AI)戦略本部(本部長=石破茂首相)の初会合を開き、国内のAI開発を後押しする方針を示した。国内で使われる生成AIは米国に依存しているが、国内開発を進めることで安全保障上のリスクに対応する狙いだ。ただ、技術力、投資額いずれも米中に水をあけられ、開発の課題は多い。

 首相は会合で「AIは社会課題の解決、産業競争力の強化、安全保障上も極めて重要だ」と述べ、利用、開発を後押しする考えを示した。政府は「世界で最も開発・活用しやすい国」を目指し、年内に基本計画をまとめる。

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 戦略本部が示した基本計画の骨子案には「国家主権と安全保障の観点から、日本の文化・習慣なども踏まえた信頼できる基盤モデルを開発」と明記。海外の生成AIの利用により、医療などの個人情報や安全保障上の機密情報が流出するリスクが指摘されている。政府は米国の対話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」のような大規模言語モデル(LLM)の国内開発や利活用を広げる狙いだ。国内外からの人材確保や、データセンターの整備などで後押しする。

 AIが与える国民生活への影響とそれへの対応も課題だ。今後、雇用への影響について調査・分析するほか、「AI社会から取り残される者を生まない」ようにするため、教育や働き方について検討するとしている。

 実在する人の画像から性的画像を生成するディープフェイクポルノによる人権侵害が問題になっており、戦略本部が公表した調査によれば、画像や動画を生成するダウンロードアプリがウェブ上に1万種以上確認され、実際に生成可能なものもあった。中学・高校生も利用可能で、主にメンバーが限られたウェブ上のコミュニティーで拡散されていたという。関係省庁と対策を検討し、指針を年内に整備する。さらに企業のAIの活用事例、開発企業の安全性向上対策、権利侵害の実態について、新たに調査を進める。

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