Migration Fears Turn Europe’s Borderless Dreams Into Traffic Nightmares
ポーランドの西端にあるスウビツェは、ドイツとの国境オーデル川沿いの街だ。この川に架かった橋を路線番号983番のバスが渡っていた。バスはドイツに入った直後にブレーキをかけ、大きなテントの中に車体をゆっくり潜り込ませて停止した。するとドイツの警察官が乗り込んできて、ぱんぱんに膨らんだ荷物を抱えている白髪の男性をバスから降ろした。さらなる検査を行うためだ。バス自体は出発を許された。
これで8分ほどの遅れとなった。ドイツ政府が移民の厳重な取り締まりを公然と行ううちに、こういう風景がたちまち日常化して、両国を行き来する人々の頭痛の種となった。
過去10年間にわたり亡命申請者が何百万人もドイツに入国したことで、有権者の反発が高まった。そこでドイツ当局は、隣国とのすべての国境で、入国しようとする車両を検査するための検問所を急いで設置。隣国もドイツの例に倣った。オーストリア、そして7月7日からはポーランドも、同様の措置を講じている。
このような検問所は、欧州連合(EU)内での「移動の自由」という理念を損ない始めている。EU加盟国は40年前から一連の協定を結び、域内の異なる国の国民が入国審査なしに訪問し合えることを事実上、宣言していた(訳注:シェンゲン協定は1993年のEU成立よりも前の85年にさかのぼる。当時の西ドイツ、フランス、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの5カ国が「人の移動の自由」実現を目指して締結した)。
- 【注目記事を翻訳】連載「NYTから読み解く世界」
検問の増加が交通渋滞を引き起こし、国境をまたいで通勤している人や長距離トラック運転手は困っている、とNYTは報じています。
しかし、その種の協定も、国…