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「超 国宝」展で展示されている奈良・石上神宮の国宝「七支刀」=奈良国立博物館、大山貴世撮影
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 奈良・石上(いそのかみ)神宮に伝わる国宝「七支刀」(4世紀)のX線CT(コンピューター断層撮影)調査が初めて実施され、金象眼の銘文がくっきりと浮かび上がった。不明瞭だった文字の一部が鮮明になり、日本の古代史を知る貴重な手がかりとなる銘文の研究がいっそう進むことが期待される。

 七支刀は、両側に3本ずつ枝刃を持つ特異な形の鉄剣。表裏に計62文字の銘文(一部欠損)があり、朝鮮半島の古代国家・百済(くだら)の王族が倭(わ、日本)の王に贈るために作ったと記される。軍事をつかさどった豪族・物部氏の氏神である石上神宮に伝わってきた。

 調査は、作られてから1600年以上がたつ七支刀の「健康診断」として奈良国立博物館が実施。CT画像には、一部がさびに覆われて読みづらく、別の文字とする説もあった百済の「済」の字が鮮明に写っていた。

 また、多くの研究者が中国の元号「泰和(=太和)四年」(369年)と読んできた七支刀の制作年は、「和」の残りが悪いため、「泰始四年」(468年)とする説もあった。今回、象眼が脱落した「のぎへん」の痕跡がより明確に見えたことから、「泰和」の可能性がさらに高まった。

 七支刀はX線写真が過去に撮られたことがあるが、両面の銘文が重なって文字が読みづらかった。CTは対象をスライス状に撮影するため、表と裏の銘文を別の画像で読むことができたという。

 製法を巡っても、鉄素材をたたき延ばす鍛造か、鋳型に溶けた鉄を流して成型する鋳造かが議論になっている。CT画像から、剣身に枝刃を後からつなぎ合わせた痕跡は認められなかったが、鍛造か鋳造かの判断は、専門家を交えて詳細に検討する必要があるという。

 今回の調査で、深刻な劣化や亀裂などは見つからなかった。奈良博の吉沢悟・学芸部長は「新しい文字の発見には至らなかったが、象眼された文字の鮮明な画像が得られた。今後の古代史研究に役立てられれば」と話す。

 七支刀は、奈良博で開催中の特別展「超 国宝―祈りのかがやき―」(朝日新聞社など主催、6月15日まで)で公開している。CT画像と文字の判読結果は会場でパネル掲示される。

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