6月27日夜、予想どおり、ニュースサイトのコメント欄には、生活保護制度と利用者を非難する冷たい言葉がとびかった。
国が2013~15年、生活保護基準を大幅に引き下げたことを最高裁が違法と判断した日のことだ。
「働く人の手取りより生活保護費が高いなんて……」。そんな投稿コメントを目にした。生活保護基準の意味が理解されていない、と感じた。
生活保護基準は国民全体の生活にかかわる数字だ。
それなのに利用者限定の既得権益のように扱われていないだろうか。
6月、膨大な貧困層が生活保護につながっていない現状を知ってもらおうと、連載「生きのびるための生活保護」をデジタル版で始めた。その中で取材した男性(58)の顔が浮かんだ。
働く人の安心を支える最低賃金は、長年にわたり引き上げられてきました。そのために重要な役割を果たしてきたのが、生活保護基準でした。
昨年夏、男性は勤務先の飲食…