明治大学教授の重田園江さん

政治季評 重田園江さん

 「世界秩序が混迷を極めている」。この見方がありふれたものになったのはいつごろだろう。破局に至った過去の歴史を振り返ると、どうやら混迷には何段階もある。昨今はいよいよ最終局面に近づいていると思わされる。

 第2次トランプ政権の発足がこうした動きを加速させていることは確かだが、それだけではない。私たちは深いところで、信頼すべき価値観が失われつつあることを体感している。

 中でも深刻なのは、近代国際法秩序を支えてきた価値観が大きく揺らいでいることだ。ウクライナ戦争が勃発した際、欧米諸国は「国際法違反」だとロシアを糾弾した。宣戦布告なしに、一説では前線の自軍にも直前まで意図を伝えず侵略戦争を始めたからだ。これが許されるなら、小国は軍事力で握り潰されるだろう。

 ところが、である。今度はイ…

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