Smiley face
写真・図版
習慣的に野糞をしている山で、お尻ふき用の葉を手にする伊沢正名。土に差した枯れ枝はこれまで排便をした場所の目印だ=茨城県桜川市富沢
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版
  • 写真・図版

現場へ! 旧石器時代の旅(4)

 「うんこと死体の復権」。鑑賞するのを一瞬、ためらいそうになるノンフィクション映画のタイトルだ。それが昨年8月の東京のミニシアターから始まって評判を呼び、今も全国各地で上映が相次ぐ。探検家の関野吉晴(76)が監督を務めた。

 3人の男性を主人公にしたオムニバス形式の作品。タヌキの糞(ふん)の成分を調べる研究者、ネズミの死体に群がる虫を描く絵本作家、そして半世紀以上にわたって野糞(のぐそ)を続ける「糞土師(ふんどし)」が登場する。

 「人が目を背けたいもの、忌み嫌われるものにこそ、生き物の命の循環を育む根底がある。そこを多くの人に直視してほしいと考えた」。旧石器時代の人類の移動の足跡を追った旅など、自らの探検や冒険の記録映像は数多く残るが、自らと価値観を共有する3人の姿を撮りたいと、関野が初めてメガホンを取った。

 今年3月、野糞の主で元キノコ写真家の伊沢正名(75)を茨城県桜川市に訪ねた。親から引き継いだ自宅は「糞土庵(あん)」と命名。野糞をするために70アールほどの裏山「プープランド」を購入した。プープは、英語圏の子どもらが日常会話で使う排泄(はいせつ)物のこと。「うんち」と翻訳するのにふさわしい。

 伊沢は公害問題や自然保護に関心が高かった20代のころ、し尿処理場建設に反対する住民運動の話を新聞で知り、「自分も世話になる施設なのに、近所に造られるのはイヤなんて」と、人間のエゴについて意識し始めた。

「死ぬのもぜんぜん怖くない」

 そんな時、山歩きの途中で真…

共有