地ビール製造会社「石見麦酒」(島根県江津市)と島根大学(松江市)は、学術研究の成果を地域振興に生かそうと、研究開発や人材育成などで協力する連携協定を結んだ。まずは地元の木の実や葉っぱから採取した酵母を使って、酒やパン、ヨーグルトを作る研究を始めた。
島根大は4月、発酵の研究で実績を持つ児玉基一朗氏=発酵微生物学=を生物資源科学部に特任教授として迎え、発酵に関する研究室を立ち上げた。微生物である酵母は、木や葉、草、花など自然界のどこからでも採取できるが、酒やパンの醸造や製造に適しているかどうかは培養して分析しないとわからないという。
江津市内で、まだ使われていない酵母を探して商品開発につなげることに共同で取り組む。一方、石見麦酒が廃棄するビール酵母を肥料や養殖魚の餌などにする研究も進める。児玉特任教授は「江津ならではの酵母を探し、商品化にこぎつけたい」と話す。
今後、大学構内に試験醸造所を設置する計画で、低コストの醸造法に定評がある石見麦酒の技術指導を受けるという。
協定調印式があった7月11日には、新たな酵母を採取するため、石見麦酒の工場が併設されているJR波子駅(江津市)敷地内に植樹されたソメイヨシノ系の神代曙(じんだいあけぼの)から実を収穫した。
上野誠・島根大生物資源科学部長は「発酵研究を学部の強みとし、地元企業へのインターンシップを進めたい」、山口梓・石見麦酒社長は「これまで培ってきた醸造の知識と技術を提供し、学生らが地域を盛り上げてくれるのが楽しみです」と話した。