さとのば大学発起人の信岡良亮さん=2024年5月15日、東京都世田谷区、上野創撮影
  • 写真・図版

 地方の町に1年ごとに移住し、自分で課題を見つけて学ぶ「さとのば大学」。国に認可された大学ではありませんが、少しずつ入学者が増えています。発起人で、運営会社「アスノオト」(東京)の社長の信岡良亮さん(42)に話を聞きました。

  • 「見違えるほど成長したい」 受験に疑問、知らない地へ飛び込んだ

――さとのば大学の4年制コースは、キャンパスがなく、地方の町に住んで学ぶのが特徴です。

 4年制コースは、本学の名誉学長の井上英之さん(元慶応義塾大学大学院特別招聘(しょうへい)教授)が、同大湘南藤沢キャンパスの授業とゼミで展開して、その後各地に広まった「マイプロジェクト」(マイプロ)という手法を主軸としています。これは、学生が自ら興味を抱いた課題やテーマを見つけ、解決や達成への道筋を自分で考えて取り組むプロジェクト型学習です。

 それを地方の町に移住して実行するのは、観光や研究で訪れる学生としてではなく、一人の住人として暮らしながら取り組む方がはるかに成長できるからです。

 都会と違って人との距離が近いので、プロジェクトに挑戦しやすい。どの人が何に詳しいか、だれに頼めばいいか、紹介してもらえる良さがある。

 大きな社会問題に学生が個人で取り組むのは大変ですが、地方での身近で小規模なマイプロは取り組みやすいだけでなく、成果や結果も分かりやすい。

 私が望んでいるのは、若いうちに「未来は自分たちの手で変えられる」「社会は自分たちが作っていける」という実感を持ってもらうこと。「どうせ変えられない」「国や政治家、大企業がやること」と思い込まないでほしい。

 誰かと一緒にという点が大事です。「未来共創人材」を増やしたい。

大学の講義、就職後に生かせていない?

――通常の大学と学び方がかなり違います。

 アカデミックに学ぶことも大事で、否定するわけではないですが、それだけでは学んだことが定着しない。実践や実体験と組み合わせてこそ、身につくはずなのに、大学教育は専門知識や理論のインプットが中心です。

 大学はシステム上、実践する場ではないから、仕方がないのかもしれませんが、多くの人は大学の講義で学んだことが身についておらず、就職後に生かせていないのでは、と感じます。

――18歳や19歳の若者が…

共有
Exit mobile version