鳥取環境大(鳥取市)の学長に今月、小林朋道氏(65)が就任した。動物行動学者として多くの著書があり、テレビの動物番組にも出演するなど生物分野の専門家としての顔も持つ。開学から23年が経つ地方の小規模大学をどう運営していくのか。抱負などを尋ねた。
――副学長(2年)を経て大学のトップに就任しました。今の気持ちは。
進学率が頭打ちになり、大学が生き残るには厳しい環境だ。大学本来の役割を高め、鳥取環境大の魅力ある独自性をしっかり受験生に伝えたい。学長は自分には向いていないと思っていた。野生生物の研究に関わっていたい気持ちもあった。
――将来構想の中で教育課程の見直しを打ち出しています。
大学の役割は学生の成長。学生が成長の達成感を得られるようなカリキュラムや評価方法を作り、可視化したい。これまでの教員も学生のことを考えないで授業をしてきたわけではないが、教員側の考えがストレートに伝わるとは限らない。
――動物行動学の研究者として、学生の教育や指導をどう考えますか。
人が喜びを感じるかどうかは、自分自身の利益、生存や繁殖に有利かどうかで決まる。学生は、成長することが生存や繁殖に有利になるから喜びを感じる。学生も教員も自分にメリットがあれば意欲が湧き、協力しようとなる。本人が意識しなくても結局そういう仕組みになっている。
――最近の学生をどうみていますか。
Z世代などと言われるが、新しい世代の文化を支持したい。文化や言葉は変化するもの。彼らが次の世代を作っていくわけなので、それを応援してやるべきだと思う。いろいろな造語には良いセンスを持っているなあと思うことがある。自分たちの世代と比べて今の若い人たちがどうこうという言い方はしない。
――全国から集まる学生たちにどんなことを学んでほしいですか。
一人の社会人として成長してほしい。誠実さや、他人から信頼されることなど、それを学ぶための地域社会が大学のすぐそばにあることが鳥取のメリットだ。地域住民も若い人が来て食事をしてくれるだけで喜んでくれ、地域活性化にもつながる。学生が地域に入り込めば課題も見え、座学と並行した学びになる。学生のそうした活動を大学としてサポートし、きちんと評価したいと考えている。
――学長になっても研究活動は変えない予定ですか。
大学運営に全力をそそぐので、今まで通りは続けられない。寂しさはあるが、できる範囲で学生とは接したい。入学したての1年生を中心に、魅力ある大学作りに学生も参画する「魅力作り委員会」のような組織を立ち上げたい。まじめだけど面白くて学生の創造力をくすぐるような。(清野貴幸)
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こばやし・ともみち 岡山県生まれ。岡山大理学部卒業。高校教員を経て2006年に鳥取環境大教授。22年に副学長、24年4月から5代目の学長(兼理事長)。専門は動物行動学と進化心理学。「先生、カエルが脱皮してその皮を食べています!」など著書多数。
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〈公立鳥取環境大学〉 2001年、鳥取県と鳥取市が設置する公設民営方式で私立大として開学。12年に公立大になる。環境学部環境学科と経営学部経営学科の2学部。16年に大学院修士課程設置。学生数約1300人。