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 都道府県の枠にとらわれず、地方の公立高校に進学する「地域みらい留学」への関心が高まっている。地方ならではの教育効果を望める一方、受け入れ側には地域活性化への期待もある。東北でも参加校が増加。どんな生徒を受け入れているのだろうか。最新の事情を探るため、二つの高校を訪ねた。

大間高校で「釣り部」

 「でかいの1匹、来い!」

 6月、マグロで有名な青森県大間町の奥戸(おこっぺ)漁港。県立大間高校の「フィッシング同好会」1年、山崎晴仁さんが、津軽海峡に向かってめいっぱい釣りざおを振った。

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青森県大間町で海釣りを楽しむ山崎晴仁さん。茨城県から大間高校に入学した=2024年6月8日午後4時47分、同町、野田佑介撮影

 茨城県龍ケ崎市出身。小学生のころに川釣りを始め、とりこに。青森とは縁もゆかりもない。進路を考えた時、小学生時代に知った「地域みらい留学」を思い出した。

 海が近くにある高校に行きたかった。中学3年だった昨秋、東京で行われた説明会で「釣り部をつくりたい」と同校担当者に提案すると、OKが出た。学校や地域を見学して受験を決め、入学後すぐ同好会を立ち上げた。

 同校の地域みらい留学で唯一の1期生となった山崎さんは、かつて企業の社宅だった一軒家で一人暮らし。学校の授業料以外の負担は、家賃や朝晩の食費、光熱水費を合わせた月3万円(昼食代は個人負担)だ。

 全校生徒約120人の大間高校は生徒の減少が続く。そこで目をつけたのが、全国から生徒を募集する地域みらい留学制度だった。担当の佐藤圭教諭(26)は「地域が衰退する。今から動かないと手遅れになる」と語る。

 地元の生徒への影響にも期待する。佐藤さんは「地元の子どもと違う経験をしてきた生徒が、新しい風を吹かせてくれる」という。

 フィッシング同好会は2年生2人と1年生2人の4人。大間町で生まれ育った2年の伊藤友哉さんは山崎さんについて、「話していて新鮮。釣りのアドバイスもしてくれるし、もうなじんでます」。

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フィッシング同好会の仲間と、釣り具の相談をする山崎晴仁さん(右)=2024年6月8日午後3時50分、青森県大間町、野田佑介撮影

 山崎さんは海洋学者に憧れていたが、入学後は釣り具メーカーで釣り道具を作る夢も芽生えた。「今までと違う世界を知ることができた」と笑顔になった。

始まりは隠岐の高校

 地域みらい留学は、都道府県の枠にとらわれず地方の公立高校に入学できる制度。生徒は豊かな自然や特色のある地域で高校生活を送れ、受け入れ側は地域の活性化につながる利点がある。

 元々は島根県の隠岐(おき)諸島の自治体で始まった取り組み。廃校の危機にあった海士(あま)町の県立隠岐島前(どうぜん)高校が2008年、地元の3町村や地域と連携し、全国から生徒を募集する「島留学」をスタート。生徒が増え、地域ににぎわいが戻った。島根県が12年度に同様の制度を始めるなど、取り組みは全国に広がった。

 一般財団法人「地域・教育魅力化プラットフォーム」(松江市)が運営する地域みらい留学は、18年度の13道県34校から35道県145校に増加。新入生は19年度の211人から816人まで増えた。

 東京や大阪などでの説明会では、生徒や保護者から「選択肢が増えた」「都市部の学校にはない、寄り添う取り組みがある」などの声があるという。都会で実現しにくい教育環境があり、自立心の育成に期待する保護者が増えているようだ。

甲子園夢見て沖縄から

 全国有数の豪雪地帯、福島県只見町。県立只見高校2年の富本結(ゆい)さんは、沖縄県南風原(はえばる)町からやって来た。1600キロ以上離れた同校に進学したのは理由がある。

 「野球部が春の選抜に出たのを見て、ずっとこの学校に入りたかった。野球部のマネジャーになりたかったんです。選手数は少なくても、笑顔で生き生きプレーする姿が印象的だった」

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只見高校で野球部のマネジャーを務める富本結さん。2年前に野球部が春の選抜大会に出場したのを見て進学を決めたという=2024年7月5日午後5時13分、福島県只見町、野田佑介撮影

 同校野球部は、22年春の選…

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