公正取引委員会=東京都千代田区

 部品製造を委託する下請け業者に木型や金型を預けっぱなしで保管料を払わないのは下請法違反だとして、公正取引委員会は13日、東証プライム上場のプラスチック射出成形機メーカー、日精樹脂工業(本社・長野県坂城町)に保管料の支払いや再発防止を求める勧告を出した。

 公取委によると、日精樹脂は2024年2月時点で、射出成形機の部品製造を委託する下請け業者13社に1年以上使っていない計260の木型や金型を無償で保管させていた。期間は長いもので30年に及んだ。サイズも幅や奥行きが2メートル前後、重さが数百キロに及ぶものがあったという。

 公取委によると、日精樹脂には保管料を負担する認識がなく、請求した下請け業者もいなかった。ただ、下請け側からは声をあげづらい構造がある。今回も調査に「発注頻度が低いものを保管するのは負担」と証言する業者がいたという。

 また、21年9月に日精樹脂から部品3600台の発注を受けた下請け業者1社が2250台分の代金しか受け取れなかったこともわかった。公取委は日精樹脂に対し、差額の原材料費など約1270万円を業者に払うよう勧告した。

 日精樹脂は取材に「結果的に取引先にご迷惑をかけたことをおわびしたい」とコメントした。公取委の勧告を受け入れ、14社と協議のうえ適正な保管料や差額の代金を払うとしている。

 射出成形機は、プラスチックを溶かして射出して自動車や家電などの部品に成形する装置。日精樹脂は欧米やアジアに販売先を持ち、今年2月時点の業績予想で25年3月期の売上高455億円、純利益6億円を見込む。

 製造業では、製造や修理のたびに使う金型などを下請け業者に無償で保管させる商慣習が長年続き、トヨタ自動車や日産自動車の系列会社も下請法違反で勧告を受けている。同様の勧告は23年3月以降で17件目になるという。

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