智弁和歌山―花巻東 智弁和歌山先発の渡辺=竹花徹朗撮影

(8日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦 花巻東4―1智弁和歌山)

 和歌山大会で「失点0」だった絶対的エース・渡辺颯人投手(3年)。甲子園の初戦・花巻東戦で先発を任された。1点リードをもらって迎えた一回裏。いきなり1、2番に連打を浴びた。

 山田凜虎捕手(2年)は「直球で3人で打ち取って自分たちのペースに持ち込もうとしたが、狙われていた」。

 この後、黒川梨大郎遊撃手(2年)の野選で同点に。さらに犠飛で勝ち越された。「後輩のミスは自分がカバーしないといけないのに。本当に情けない」と渡辺投手。

 中谷仁監督は「硬さがあったかもしれない。序盤の失点は少ない投手だが、こういうことがあるのが甲子園だ」と振り返る。

 五回裏には、自身の一塁への牽制(けんせい)が悪送球となって三塁まで進塁を許し、次打者に3点目の適時打を浴びた。「自分のミスで迷惑をかけた。一球に泣く、というのを身をもって感じた」と唇をかむ。

 好きな言葉は「執念」。昨夏の初戦・霞ケ浦(茨城)戦で救援のマウンドに上がったが、延長十一回に2点を失い敗れた。「この借りは絶対に返す」。悔しさを原動力に自らを追い込む姿が、新チームに緊張感を与えた。「ストイックな姿勢が本当にすごい」と、記録員を務めた中井貴さん(3年)は舌を巻く。

 今春の選抜大会では決勝まで進んだが、横浜(神奈川)に打ち込まれ準優勝。「もう負けたくない」。指導者がいない自主練習でも一切手を抜かない。「今後こういう投手とはなかなか巡り合えないんじゃないかと思うぐらい、ハートの強い選手」と中谷監督も信頼を寄せる。

 六回からはマウンドを宮口龍斗投手(3年)に託しベンチへ。最終回、涙があふれた。「入学した時からのつらいこと、悔しいことが頭をよぎった」

 高校の2年半、本気で日本一を目指してきた。「お世話になったたくさんの人たちに恩返しできなかった。情けない結果に終わって悔しい」

 今後も野球を続けていく。「次のステージこそ、果たせなかった日本一を取る」

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