イランの首都テヘランで2024年8月5日、殺害されたイスラム組織ハマスのハニヤ政治局長(左)とイランのペゼシュキアン大統領を描いたビルの壁画=AP

 イスラム組織ハマス最高幹部の殺害をめぐってイスラエルへの報復を宣言したイランが、攻撃に踏み切らないまま3週間近くが経った。米国などの仲介によるパレスチナ自治区ガザの停戦交渉が続いており、交渉の行方を見極めているとみられる。ただ、妥結に至らなければ報復を実行する可能性も消えていない。

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 「ガザの戦争終結に向けた調停努力が話し合われ、冷静さと緊張緩和の必要性が強調された」

 停戦交渉を仲介するカタールの外務省は15日の声明で、ムハンマド首相兼外相がイランのバゲリ外相代行と電話協議したことを明らかにし、議論の内容をこう紹介した。

 米紙ワシントン・ポストが報じた外交筋の話によると、ムハンマド氏はバゲリ氏に対し、停戦交渉が進展の兆しを見せている時に報復することの「重大な影響」を考慮するよう警告したという。

 一方、バゲリ氏もムハンマド氏との電話協議について16日、X(旧ツイッター)に投稿。「ガザでの虐殺を止めるため、外交を含むあらゆる努力が必要だと強調した」と記し、カタールの仲介努力に理解を示した。

 イランがいま報復を行えば、攻撃されたイスラエルの交渉態度が硬化することは必至だ。そうなれば、イランが交渉を台無しにしたとして国際的な非難を浴びかねない。

 イランの最高指導者ハメネイ師は14日の演説で、「戦術的でない後退は神の怒りを買う」と述べた。米戦争研究所(ISW)は16日に公表したガザ情勢の分析で、この発言が「戦術的後退」の容認をほのめかしたものだとし、ハメネイ師が停戦交渉を考慮して報復を遅らせている可能性があると指摘している。

「時間稼ぎ」の声も

 停戦交渉を仲介する米国、エ…

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