滋賀県南部に位置する野洲(やす)市。琵琶湖に注ぐ野洲川沿いに、工場や住宅街と並んで草が生い茂る砂利の更地がある。近くに30年前から住んでいる80代の女性は「昔はきれいで、憧れるようなマンションがあったのですがね」と振り返る。

 ここには2020年まで「廃虚マンション」が建っていた。

野洲市によって解体されたマンションの跡地(左側)、隣のマンションも所有者によって解体されて更地になっている=2025年3月5日、滋賀県野洲市、片田貴也撮影

 倒壊リスクが著しく高い空き家などを自治体が指定して、取り壊すこともできる「空家等対策特別措置法」に基づくマンション解体の全国第1号となり注目を集めた。

 野洲市などによると、マンションは3階建て9戸で、1972年に建てられ、2010年以前から誰も住まなくなっていた。12年に手すりが外れて階段が崩落したと通報があり、18年の大阪北部地震では市道に面した外壁が崩落した。近くの住民女性は「強風が吹くたびに建物の板のようなものが散乱して片付けが大変だった。幽霊屋敷みたいで不気味で犯罪にも使われないか不安だった」と話す。

■解体費の回収は半分以下…

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