イスラエルによるパレスチナ自治区占領の実態を描いたドキュメンタリー映画「壁の外側と内側」が30日から東京都内などで順次公開される。ジャーナリストの川上泰徳さん(69)が、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸を歩き、イスラエルが西岸との間に建設した分離壁の「外側と内側」から、ガザで続く戦闘の背景に迫っている。

 川上さんは元朝日新聞記者で、中東アフリカ総局長やエルサレム支局長などを歴任。その後もフリーランスとして中東情勢を追っている。

 今回、映画制作を決めたのは、2023年10月から続くイスラエルによるガザ侵攻の根底にある「日常化したイスラエルによるパレスチナの占領と、両者の対立の深層を知りたい」という思いだ。

 川上さんは昨年7月、もう一つのパレスチナ自治区で、ガザと同様に分離壁でイスラエル側から隔てられたヨルダン川西岸で取材した。西岸の最南端、マサーフェル・ヤッタで見たのは、羊飼いたちが暮らす荒涼とした大地がイスラエルの軍事演習場に指定され、住民の排除が進む実情だった。イスラエル軍にブルドーザーで住宅や学校を破壊されたり、入植者から暴力を振るわれたりしながらも、その地にとどまることで抵抗するパレスチナ人の姿を映した。

パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のマサーフェル・ヤッタで、イスラエル軍に学校を破壊されたことについて話す地区長=2024年7月、川上泰徳さん撮影

 壁の「内側」のイスラエルで…

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