麻雀の高校日本一へ、決勝戦第1試合 実況:小林未沙 解説:醍醐大(セガサミーフェニックス)【第1回全国高等学校麻雀選手権大会】
全国の高校生らが頭脳スポーツとして麻雀(マージャン)の腕を競う第1回全国高等学校麻雀選手権大会(朝日新聞社主催、コナミアミューズメント、セガ協賛)の本選が8月7、8日に東京で開かれる。
大会の創設が発表されて以降、SNSでは「リアル咲!」「現実が追いついた」といったコメントがあふれている。
「咲」とは、女子高校生が競技麻雀に挑む漫画「咲-Saki-」のこと。作品内では高校に麻雀部があり、全国大会優勝を目指して強豪校との試合が繰り広げられていく。
「咲」をよく知る人は、この大会をどう見るだろう。
アニメ版で主人公の宮永咲を演じる声優、植田佳奈さんは高校生たちへのエールを送り、7月12日にあった大阪予選の1日目も見学した。
- ベッドから出られなくなった僕、高校日本一へ 麻雀が外に連れ出した
――予選の様子を見て、どう感じましたか。
みんな静かに打っていて、緊張感があります。咲の世界が現実になったらこういう感じなんだなと思いましたし、自分が高校生だったときのことも思い出しました。
緊張感がある一方で、感情を出してガッツポーズする人やため息をつく人もいました。高校生らしさを感じて、かわいらしい。制服を着て戦うチームや同じTシャツを作ってきたチームもあって、まさに青春。連帯感があって素敵でした。
本選ではリアル卓の対局もあるということで、ますます注目したいです。
――大会の創設を発表すると、SNS上では「リアル咲」という声がたくさん上がりました。
ありがたいですね。参加者の中には、麻雀部や麻雀同好会に入っている人もいると聞き、驚きました。
咲を演じ始めた(2000年代後半)当時は、麻雀がクリーンな印象になってきた今と違って、どちらかというとダーティーなイメージ。ラジオで麻雀を打ちながらおしゃべりする番組をやっていたのですが、麻雀はやっているけど内緒にしていますという声優が多く、ラジオのオファーを断られることが結構ありました。
なので、まさか咲が現実の世界になるとは……というのが素直な感想です。
麻雀の高校日本一へ、決勝戦第2試合 実況:襟川麻衣子 解説:佐々木寿人(KONAMI麻雀格闘倶楽部)【第1回全国高等学校麻雀選手権大会】
――リアル咲の大会ということで、期待するのはやはりリンシャンカイホウ(宮永咲の得意技)ですか?
見られたらうれしいですけど、自由に打ってほしいですね(笑)。
咲の魅力はフレッシュな部活動のシーンと、エンターテインメントに寄った超能力麻雀のシーンのミックスです。麻雀の内容は非現実的だけど、部員同士の関係性によって現実的に見えてくるのが、すごいところ。大会に出場する高校生のみなさんの関係性も「リアル咲」になるといいなと思います。
――予選を見学中に「青春を感じる」「全国大会いいな」とも話していました。
(宮永咲が所属する)清澄高校麻雀部のみんな(を演じる声優)とはとても親近感があります。いまでも仲が良いですし、みんなで卓を囲んだこともありました。一生続く仲になると思いますし、そういう関係性はチーム戦の醍醐(だいご)味ですよね。
そして、咲という作品もまだ続いています。願わくば私たちも(全国大会の途中で止まっているアニメ版の)続きがあったら、また全国大会に行きたいと願っています。
――今回は2人1組のチーム戦です。咲でも、麻雀の団体戦が印象的ですね。
団体戦、良いですよね。私は、好きなゲームの大会でこれまで何度も団体戦に出てきました。なので、大会の時のテンションや心理状態は声優の中でもかなり詳しい方だと思っています。
団体戦で大事なのは、自分を許して仲間も許すこと。仲間のミスをどれだけカバーできるかがとても大切で、それは人間としての中身を育て、成長させることにつながっていると思います。
麻雀は特に、理不尽な世界です。どれだけ強くても、いつもトップになれるわけではない。良いときも悪いときも絶対にあって、最善の思考をしても負けるときは負ける。だからこそ仲間を大切にできるゲームだし、団体戦は個人戦より何倍も成長できると思います。
――植田さんの母校、大阪府立市岡高校も出場します。(インタビュー後、大阪予選で敗退)
母校も出ているんですか! うれしいです。高校野球のように母校を応援する楽しみもあるんですね。
高校時代は、放送部に入っていました。実は声優の基礎を教えてくれたのが、放送部の先輩でした。元々、宝塚を目指してお芝居の稽古をしていた中で、声のお芝居の声優という道もあるなと気づくきっかけをくれたんです。
高校を卒業して、大学生になってすぐ声優のオーディションを受けたんですけど、先輩と出会っていなかったら、人生の一歩を踏み出すのがもうちょっと遅れていたと思います。
本当に人生、何が起こるか分かりません。今回、麻雀の大会に出ることが、もしかしたら人生を変えるかもしれない。思い出に残る日になったらいいなと思います。
――麻雀の良さはどういうところにあると思いますか。
麻雀を始めたばかりの頃、仕事の先輩たちに呼ばれてお芝居の話をしながら打っていたんですね。すると、麻雀の癖などを見ながら「お前こういうやつなんだな」と知ってもらえて。麻雀を通して、いつの間にか仲良くなれたことをよく覚えています。
世界中探しても、こんな楽しいボードゲームは麻雀の他にないと思います。
――出場する選手たちにメッセージをお願いします。
麻雀を通して、かけがえのない友人やかけがえのない思い出ができると思います。その一つ一つは、これからの人生できっと忘れられない瞬間をたくさん運んでくれます。ぜひ青春と麻雀を謳歌(おうか)していただければ、と思います。
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全国高校麻雀選手権大会は2人1組のチーム戦形式。計286チームが出場した予選を勝ち抜くなどした24チーム48人が本選で8半荘(ハンチャン)ずつ戦い、勝ち上がった4チームが決勝に進む。予選は全てアプリ上で対局が行われたが、本選は麻雀卓も併用。「リアル咲」の世界が実現する。