韓国軍によると、8日午前8時10分ごろから同9時20分(日本時間同)ごろにかけ、北朝鮮東部の元山付近から日本海に向けて短距離弾道ミサイル数発が発射された。日本の防衛省も午前8時台から9時台にかけて北朝鮮が複数の弾道ミサイルを発射したと発表した。
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防衛省によると、うち1発は最高高度約100キロで、約800キロ飛んで日本の排他的経済水域(EEZ)の外に落下したとみられる。このミサイルは変則軌道で飛んだ可能性があるという。
韓国軍によると、発射されたのは複数の種類のミサイルで、関係者によると、短距離弾道ミサイル「KN23」や超大型放射砲(ロケット砲)と呼ぶ「KN25」が含まれているとみられるという。軍は「韓米の情報当局は発射準備の動向を事前にとらえ、監視してきた」としている。
北朝鮮による弾道ミサイルの発射は、米韓合同軍事演習の初日だった3月10日以来、約2カ月ぶりとなる。
ロシアへの供給を念頭「性能を確認した可能性」
今回発射されたとみられる「KN23」や「KN25」はいずれも北朝鮮が軍事協力を深めるロシアに供給されているとみられている。韓国軍関係者や専門家は今回の発射について、ロシアへの輸出などを念頭に置いた性能の点検や、飛行の安定性を確かめるための実験だった可能性があるとの見方を示した。北朝鮮の軍事動向に詳しい宮本悟・聖学院大教授も「ウクライナの実戦で使用して分かった不具合を直すなど、改良の目的があるだろう」と指摘する。
中谷元防衛相は8日午前、防衛省で記者団の取材に応じ、複数発のミサイルのうち、最も日本に接近した1発は最高高度約100キロで約800キロ飛行し、「変則軌道で飛翔した可能性がある」と明らかにした。防衛省によると、北朝鮮は2019年以降、低空を変則軌道で飛行する短距離弾道ミサイルを繰り返し発射。変則軌道のミサイルは落下地点までの軌道が読みづらく、迎撃が難しいという問題がある。
一方、北朝鮮は発射を短距離弾道ミサイルにとどめているため、トランプ政権への様子見を続けているとの見方が日本政府内にはある。ただ、実戦での経験を積むことでミサイルの性能はより高まることになるため、政府は警戒を強める。官邸幹部は「発射数は抑制されているが、ミサイルの運用能力や技術力の向上に必要な発射は着実に進める考えだろう」と指摘。変則軌道のミサイル追跡にはレーダー能力を強化しなければならず、政府内では「北朝鮮のミサイル能力の向上に応じた防衛体制強化が必要」(官邸幹部)との考えは強い。
日本政府は同日、北朝鮮に対…