米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が23日午後11時(日本時間)から、米西部ワイオミング州ジャクソンホールで講演を行う。利下げや米景気減速について何を語るのか。発言内容は円相場など金融市場にも大きく影響するため、注目が集まっている。
ジャクソンホールはイエローストン国立公園に近い山間に位置し、米国でも人気の避暑地として知られる。ここで毎年、世界の中央銀行関係者らが集まる経済シンポジウムが開かれる。シンポジウムの目玉がFRB議長の講演だ。過去には発言をきっかけに金融市場が大きく動いたこともある。
今年の最大の焦点は、パウエル議長がどういった表現で9月会合やその後の「利下げ」に言及するかだ。
現在の米経済は「景気が急激に冷え込んでいるわけではないが、緩やかにクールダウンしている」(米アナリスト)という状況にあるとみられている。新型コロナ後に激しいインフレに見舞われた頃と比べれば、高金利の影響で就業者の増加ペースは落ち着き、失業率は上昇し、中低所得者を中心にクレジットカードの延滞は増加。個人消費の減速懸念が高まっている。
パウエル氏は7月末の記者会見で、「9月会合で利下げが検討される可能性がある」と利下げを示唆した。その後に発表された統計でもインフレ鈍化は続いており、市場ではFRBが9月に利下げに踏み切るとの見方が強まっている。利下げすれば、FRBとしてはコロナ後の世界的なインフレ局面で初めてとなる。
また、長引く高金利が、米国の雇用情勢や経済を冷やしすぎる懸念も強まっている。8月上旬には、米国の雇用統計が市場予想より大幅に悪かったことをきっかけに金融市場が荒れた。そのため市場の一部には、急激な景気悪化を防ぐため、FRBが9月会合で通常の2倍にあたる大幅な利下げに踏み切るという観測もある。
FRBはインフレ抑制だけでなく雇用環境など景気への目配りに重心を移しつつある。景気の先行きや雇用情勢について、パウエル議長がどういった認識を示すかも関心が高い。
コロナ後の歴史的な円安ドル高は、日米の金利差を理由に進んできた面が大きい。日本銀行は既に利上げをスタートした。米国の利下げ開始やその後の利下げペースは、今後の円相場を大きく左右する。(ジャクソンホール=真海喬生)