大切に読まれてきた絵本を、もう一度――。名古屋経営短期大学(愛知県尾張旭市)で保育士などを目指す学生たちが絵本の修理に取り組んでいる。
地域の保育園や家庭から預かり、きれいに直して返却する。授業の一環で、学生たちだけでなく、絵本を直してもらった子どもたちに物を大切にする気持ちを育んでもらう狙いもあるという。
29日、約100冊の絵本や図鑑の修理作業があった。何度も何度も子どもたちの手でめくられた本は、背表紙が取れたり、破れていたり。「のりもの」の絵本は、ページがばらばらになっていた。修理方法を指導した市立図書館職員の松下恭子さんは「一冊一冊丁寧に向き合ってあげることが大切」と語りかけた。破れたページはでんぷんのりで貼り付け、かすれた部分はクレヨンで色を塗った。
子ども学科2年の船橋桃香さんは「大事にしていた本がきれいになって子どもたちの手に渡るんだと思うと、やる気が出ます」と話した。
絵本を預けた側にもそれぞれの思いがある。市内に住む女性(65)は、娘たちが小さいころに読んでいた一冊「14ひきのひっこし」(いわむらかずお作)を預けた。
仕事から帰り、寝る前に読み聞かせをするのが日課だった。2人の娘がそれぞれ1冊ずつ選ぶ約束。「寝たかなと思って読むのをやめると起きて、最後まで読まされてね」。なつかしそうに話した。絵本は古くなってしまったが、大事な時間をつくってくれたもので、手放せない。修理をお願いすることにした。
修理した本は、学生たちが保育園に直接返しに行く予定だ。