奈良盆地南部に位置し、「万葉集」をはじめとして多くの和歌が詠まれた大和三山。7世紀後半の藤原京の造営にあたって、景観的にも、精神的にも重要な意義を持ってきました。奈良県大淀町教育委員会の松田度さんに、大和三山を深掘りしていただきます。
香具山、畝傍山、耳成山と天皇家のかかわり
奈良県橿原市には、香具山(かぐやま)、畝傍山(うねびやま)、耳成山(みみなしやま)として知られる国の名勝「大和三山」があります。それぞれの高さ(標高)は、152・4メートル、199・2メートル、139・7メートル。
龍門山地から北西にのびる尾根が侵食されてできた、花崗岩(かこうがん)とはんれい岩の山塊が香具山。花崗岩からせり出した火山岩(流紋岩など)の残丘が、畝傍山と耳成山です。
香具山は「万葉集」などに「天香具山(あめのかぐやま)」と歌われた神山で、北麓には天武天皇の長子・高市皇子の「香具山宮(かぐやまのみや)」がありました。
畝傍山は古くは「畝火山」と書き、西麓には安産の神として知られる畝火山口神社が、東麓には神武天皇陵や神武天皇を祀る橿原神宮があります。
耳成山の中腹には耳成山口神社があり、山麓に推古天皇の「耳梨行宮(みみなしのかりみや)」があったとされます。いずれも天皇家に深いかかわりをもっていました。
三山に共通するものとは
地図を広げてみましょう。三…