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【社説PLUS】 社説を読む、社説がわかる

 いまの国際情勢をみるにつけ、戦後の秩序が「力による支配」に逆回転を始めているのではないか。そんな問題意識から、戦後80年を迎える社説では「法の支配」に焦点をあてました。

 8月15日の朝刊紙面では、特別に1面に社説が掲載されました。

 1面には多くのニュースがひしめき合います。社説も、ぎりぎりまで分量を絞っての掲載となりました。

 そこで、今回の「社説PLUS」では、内容をたっぷり盛り込んだロングバージョンをお届けすることにします。

 あわせて、国際司法をつかさどる立場から、「法の支配」の現在地をどう見るのか。社説にも登場する国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長のインタビューも是非ご覧ください。

【8月15日社説 ロングバージョン】

 80年前、国際社会は無数の命を奪った世界大戦の教訓から、武力の行使を原則禁じ、国の大小によらず法によって正義や秩序を保つ「法の支配」を築くと誓ったはずだった。だが、その理念は影を潜め、「力の支配」が再び頭をもたげている。

 「法の支配」とは、国際社会でも国内でも、強国による力の行使や権力者による恣意的(しいてき)な支配を否定し、法の公正さに基づいて社会の秩序を実現していくという理念だ。

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オランダ・ハーグの国際刑事裁判所=2024年3月26日、森岡みづほ撮影

 オランダに本部を置く国際刑事裁判所(ICC)は、「法の支配」を保とうと、戦勝国による裁判ではなく、独立した立場で重大な国際犯罪を裁く国際司法機関として2002年に設立された。締約国は日本を含む125カ国・地域で、米ロ中などは未加盟だ。そのICCが、国連安全保障理事会常任理事国の米ロ双方から、容赦ない圧力を受けている

責任果たさぬ大国

 ICCは昨年、パレスチナ自治区ガザでの戦闘を巡りイスラエルのネタニヤフ首相らに戦争犯罪で逮捕状を発行。これにトランプ米政権が反発し今年6月、ICCの4裁判官に資産凍結など経済制裁を科した。ICCは急きょ、十数人が参加する裁判官会議を開き、制裁対象となった裁判官の一人が涙ながらに訴えた。

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ガザ市内の食料配給センターで、食事を受け取るために集まったパレスチナ人=2025年8月13日、AFP時事

 「私は犯罪被害者のため正義…

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