最高裁判所=東京都千代田区

 鹿児島県大崎町で1979年に男性の遺体が見つかった「大崎事件」をめぐり、殺人罪などで服役した原口アヤ子さん(97)の裁判のやり直しを求めた第4次再審請求審で、最高裁第三小法廷(石兼公博裁判長)は、「有罪に合理的な疑いが生じる余地はない」として原口さん側の特別抗告を棄却した。25日付の決定。原口さんの再審を認めない判断が確定した。

 5人の裁判官のうち4人の多数意見。法学者出身の宇賀克也判事は「再審を認めるべきだ」とする反対意見を示した。

 確定判決によると、原口さんの義弟だった男性(当時42)が79年10月、酒に酔って道路脇の溝に転落。近所の住民2人に軽トラックの荷台に乗せられ、自宅に運ばれた。その後、男性との関係が悪かった原口さんと元夫らがタオルで男性を絞殺し、遺体を牛小屋の堆肥に埋めたと認定された。

 原口さんは捜査段階から一貫して犯行を否認したが、81年に懲役10年の判決が確定して服役。3次請求審までに計3回、再審開始を認める判断が出たが、検察側が不服を申し立てて、いずれも開始決定は取り消された。

弁護側は「殺人事件ではない」と主張

 2020年に申し立てた第4次請求で弁護側は、無罪を示す新証拠として「遺体の写真などによると、溝に落ちた際の首のけがと、その後の不適切な救護が原因で男性は死亡した」とする救命救急医の鑑定書などを提出。男性は自宅に運ばれた時に死亡しており、殺人事件ではないと主張したが、地裁と高裁は再審を認めなかった。

 第三小法廷は今回の決定で、新鑑定について「遺体は腐敗が進んでいて、写真で得られる情報の証明力は限定的だ」と言及。死因の一つの可能性を指摘しただけだと述べた。

 そのうえで、現場の状況や関係者の供述などを総合的に考慮した確定判決の信用性は揺らがないとし、有罪の判断は正当だと結論づけた。

 反対意見を付した宇賀判事は、新鑑定について「写真は極めて鮮明で、鑑定は専門的知見に裏付けられて信用できる」と評価。共犯者とされた元夫らに知的障害があって供述を誘導されるおそれが高く、実際に供述に不自然な点が多いことなどを総合評価すれば、原口さんを有罪とした認定には合理的な疑いがあり再審開始を認めるべきだとした。

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